歴代コカコーラCMのDVD (The Coca-Cola TVCF Chronicles)

まさかというか、本当かというか....
コカコーラの歴代(1964-1989)CMを84本集めたDVD「The Coca-Cola TVCF Chronicles」が7月2日、リリースされた。
発売はエイベックス・イオ。数年前には東芝EMIが「もはや無用」とばかりに売りに出していたURCの音源を譲り受け、エイベックスゆずりのセンスで見事にセールスに成功したレーベル。こういう商品を生み出すセンスは流石だ。

昨日から職場で見ているのだけど、上の画像の「コカ・コーラ」のロゴを見ているだけでも懐かしい。
何よりも御大ムッシュかまやつ自身が出演する貴重な映像や、大好きな"赤い鳥“の音楽が流れるCM(本人は出演していない)などは見ているだけでドキドキする。

僕のコカ・コーラに関する一番古い記憶は1972年のこと。小学校1年生だった僕は横浜関内のYMCAの体操教室に通っていた。当時のYMCAは大正か昭和初期という雰囲気の古い建物だったけど、このレトロな建物の1F玄関前にコカ・コーラの自販機があった。もちろんビンの自販機で当時の値段が1本60円だったと記憶している。お金を入れて、横のガラス扉を開き、ロックが解除されたコーラのビンを引っこ抜くタイプ。力ずくで引っこ抜けないかと挑戦したこともあった。
自販機の正面に凹みがあって、そこに栓抜きがとりつけてあり、王冠をそこに引っ掛けて「エイッ」とビンを下にひねると、王冠だけがスポンと抜けて自販機内の「王冠ストッカー」に落ちてゆくという具合だった。教室帰りにここでコーラを飲むのが楽しみで、体操教室に通っていたようなものだった。そして1Fの玄関前ロビーで騒いでいて、隣接するレストランのオヤジによく怒られたものだ。そんな生活は小学校2年の6月に市庁舎前の交差点でタクシーに轢かれるまで続いた。

そして数年後にスーパーカーブームが来ると、スーパーカー王冠というのが登場し、磁石を持ってこの手の自販機周辺をウロウロするガキどもが登場する。このあたりのことは「スーパーカー王冠」で検索してみるといいだろう。

まあそんな「さわやかな」昔話はこの位にしておいて...と。

DVDを見て気付いたことを書いてみる。どうせ1970年代~1980年代の「早見優可愛い」とか「おっ宮沢りえじゃん」とかは、他にも書く方がいると思うので「1960年代」ということで。

【フォー・コインズ(三沢 郷)】(chapter.01-06ほか全16本でボーカル担当)
フォー・コインズはのちにTV主題歌などの作曲家として有名となる三沢 郷率いた男性ボーカル・グループ。1960年代のTVサントラやCMサントラ集には必ずといっていいほど登場している。個人的には栗塚 旭主演の「俺は用心棒(1967年)」の主題歌「おとこ独り」の抑えたコーラスワークが大好きだ。
このDVDは"「製作不可能」とまで言われた"とキャッチコピーにあるが、何よりも大変だったのは出演者や権利関係への許諾だったと言われている(1年以上を要したらしい)。たとえば三沢 郷は昨年の11月に亡くなっているから、ギリギリのタイミングで許諾を得たのじゃないだろうか。

【井上順】(chapter.06 バイキング編)
冒頭でバーベキューをせっせと焼いている。裏方に徹しているうちにコーラを全部飲まれてしまうというコミカルな役が順ちゃんだ。注意すべきなのはこのCMのオンエアが1964年だということ。正式なスパイダースのデビューは1965年の5月だから、ここに登場する順ちゃんは"デビュー前の映像"、ということになる。スパイダースデビュー前のメンバーの活動については、堺正章(映画)、かまやつひろし(音楽)なんかは有名だけど、順ちゃんは知らなかったなぁ~。

【安田章子、祥子】 (chapter.09.10.13ほか全5本でボーカル担当)
少女時代から童謡歌手として有名だった姉妹。この時期(1966年)はCMの仕事をやっていたようだ。
安田章子が由紀さおりに改名し、「サウンド・オブ・サイレンス」ばりの「夜明けのスキャット」の大ヒットで一躍スターダムにのしあがるのは1969年のことだ。

【加山雄三とザ・ランチャーズ(喜多嶋修)】 (chapter.15.20)
chaapter15の方には特にクレジットはないけど、両方とも加山雄三のバックバンドだったザ・ランチャーズが出演している。「それじゃあ喜多嶋舞の親父さんはどの人だ?」と探してみた。今や世界的なミュージシャンでもある喜多嶋修(加山雄三の従兄弟でもある)が当時はメンバーにいたはずである。
チャプター15「音楽」でバックのランチャーズの中央でギターを弾いている人物のような気がしてならないのだが、よくわからなかった。

【The Hollies (ザ・ホリーズ)】 (chapter.22)
「はて、1960年代のイギリスマンチェスター出身のロックバンドなんかこのDVDに出てきたかな?」
という人は22「テレフォンA (1968年)」を見るべし。電話がかかってきた少女が「あっ、ちょっと待っててね」と言って、保留音代わりにかけるレコードがThe Holliesのレコードだ(ただし音楽は流れない)。
これは映像から判断して1967年に東芝音楽工業からリリースされた4曲入りEP盤「Bus Stop/I Can’t Let Go/Stop Stop Stop/Sweet Little Sixteen」に間違いない。当時の規格番号は"OP-4207(オデオン)"。60年代の東芝特有の"赤盤"なのが特徴。静電気がつきにくい素材を使ったレコードのみを赤色に着色してリリースしていたことからこのようなネーミングがつけられた。
このうち彼女が針を落とすのはA面1曲目の"Bus Stop"だ。

「ごめんなさい。ちょっとね、コークが飲みたかったの」とコーラを持って帰ってきた時、映像ではレコードの針が曲の後半にある。彼氏は3分ばかり待たされたことになる。
「ちょっと」どころではない。

【ピンキーとキラーズ】(chapter.26)

ええと、「今陽子」と言った方がわかりやすいのか.....
リアルタイムでの「ピンキラ」は僕がYMCAに通っていた頃に解散してしまったので、うっすらとしか覚えていない。むしろ僕の姉貴がパンタロンをはいてホウキを振り回しながら「ピンキラ」の真似をして、思いっきり僕の後頭部をぶん殴った恨みの方が今でも忘れられない。

この1969年のCMに出てくる自動販売機は、僕が実体験したものよりも最新型に見える。ボタンを押すと下からビンが出てくる構造のようだ。

こうやってDVDを見ていると、まったく同じ味の清涼飲料水にもかかわらず、時代の変遷とともにCM戦略が代わって行くさまが実に面白い。初期のCMは商品名連呼型のスタイルなんだけど(1964年)、「意見が合うのは」シリーズ(1966年)になるとコピーを重視した作りになる。時期を同じくしてポップカルチャーの時代に突入をすると、CMソングはそのままながらも、「若者のライフスタイルに彩りを添えるコーラ」という見せ方をするようになる。同時期に始まった加山雄三のCMシリーズは、若者たちがクルーザーで孤島に行ってパーティーをやったり、セスナ機で空を飛んだり、雪山で豪華なパーティーをやったりと、浮世離れしているのだけど、1960年代後半からはリアルな若者のライフスタイルにぐっと近づいている。1970年代に入るとこりゃもう"Discover Japan“の世界でして、ジーパンを履いた等身大の若者たちの旅先での出会いやふれあいを綴ったものばかりだ。そのあたりの変遷を見てみるのも面白いだろう。

最後にTV画面の下に写っている3つのパッケージだけど、左から順番に、
1:「Coca-Cola Commercials」(1994年リリースの海外CM集CD)
2:「コカ・コーラCMソング集 1962-89」(2005年リリースの国内CM集CD)
3:「The Coca-Cola TVCF Chronicles」(2008年 DVD)

1は"Things go better with Coca-Cola"という海外60~70年代のコカ・コーラのCMソング集。Tom Jones、Petula Clark、Jan & Dean、Supremes、Ray Charles、Nancy Sinatra、Moody Blues、Bee Gees、Aretha Franklin、Marvin Gaye & Tammi Terrell、B.J. Thomas、Vanilla Fudge、Ray Charles & Aretha Franklin、Fifth Dimension、Gladys Knight & Pips.....なんていう信じられないような豪華アーチストの共演だ。全く同一の曲をベースにしているにもかかわらず、アーチストによってこれだけ解釈が違うのかと驚かされる。個々のアーチストのBOXセットにも収録されていないようなレア曲がズラっと並んでいる。

すでに廃盤になっているようなので、もし店頭で見かけたら絶対購入することをオススメする。

最後に:ネタ詰め込みすぎで申し訳ないですけど、
ベンディングマシン・レッド」必見です。