「忘年会のあとは終電車を乗り過ごさないようにしようね」Vol.1

確か10月の半ばぐらいのことだったと思う。日吉NAPのオーナーである竹村さんから電話がかかってきた。
それは「12月で日吉NAPが9周年を迎えるのですが、記念すべき第一弾として何かイベントをやりませんか?」というものだった。

とても無理だと思った。
教室主催の"Winter Live 2010″のわずか3日後だからだ。

しかし日吉NAPはPAもいいし照明もしっかりしている。横浜の弾き語りのライブハウスとしては理想的な環境を備えている。
何よりもオーナーで自らもシンガーソングライターである竹村さんやスタッフの音楽に対する真摯な姿勢には共感を感じるし、ぶっちゃけ他のライブハウスも見習うべきだと常日頃感じていた。
何よりもこの箱に出てみたいと僕自身が思っていた。

そこで、僕個人主催のイベントにしたらどうだろう?と考えたのだ。
ミューポの枠を越えて、僕が好きな色々なミュージシャンに集まってもらえたら、それはそれで凄いものができる。
そしてもし集まらなかったら、自腹を切ればいいさと、そんな風に考えた。

それが嬉しい結果となった。
色々な方のご協力があり、最終的に年齢も音楽性も音楽との関わり方も異なる11名のアーチストが出演する音楽イベントとなったのだ。
まず参加して下さったすべてのミュージシャンの方々にお礼申し上げます。

和田多聞

和田多聞
この日は夜からどうしても仕事がはずせないということで、トップバッターで出演してもらった和田多聞君。まだ来客も少ない中で、立ち会った誰もがそのクオリティの高さに「もったいない!」と思ったことだろう。彼の音楽を一言で言えば「ジャパネスク」。日本的な精神世界が音楽の世界に現れている。
「浮浪雲」「錫杖物語」「東京タワー」どれも好きな作品だ。

【The Pocopens】

普段はC’darsというバンドで活動する「あつかましい」オッサン二人によるGt&Pianoユニット。ロックを何と心得ているのかは知らないが、サウンドを解体料理して独自のサウンドに変換する失礼な連中である。しかもそのステージMCは杉田の白木屋あたりで交わされるものと何らかわりはない。

【KUMU】

惜しまれつつ12月12日に解散するBright Nightのボーカルによるこれが初ソロライブとなった。この音楽で弾き語りは多いに「アリ」だと思う。今回は立って弾いたけど、座って弾くのも「アリ」だと思う。ずっと喉の痛みが続いている中で、それをおしての出演だったけど、声はよく出ていたよ。
後でKUMUいわく「いやぁ~アコースティックの弾き語りって難しいすね~」。

友希

紡ぎだすサウンドにも、そのボーカルにもめきめきと成長を感じる長女キャラの友希ちゃん。ずっと応援したいシンガーだ。ストリートでも歌った「儚虫」は何かから抜け出て、何か別の次元に成長しようとしているという意味で本当にいい曲だ。



日吉NAPの常連である喉。様々な試行錯誤を経ながら、その音楽に大きな変化が訪れたというのがこの1年の彼だった。
「スタイルフォルス」も「橋」「蝉」も好きだが、今回初めて聞いた「遺言」はその集大成としてとてもいい曲だと思った。
よっしゃあ、お次は全部Bメロの曲だぁ!。

稲垣光治

SGDのNAOちゃんの紹介。事前にMy Spaceを聞いて、なんとなく喉の次に出てもらおうと思った。暗黒と光のギャップを楽しみたかったからだ。一言で言えば彼の音楽は「草原」。そして涼しげな風が野を分けるように吹き抜けていった。

栗原淳

この辺りの時間帯からは仕事帰りの出演者が増える。そして気がついたらNAPも満員となっていた。
普段はKAITENで活動している栗原君は仕事帰り。そして今日が初のソロステージとなった。普段と勝手が違う中で、ガチガチになりながらのステージだった。だけど彼の作る侠気のある音楽の良さがとても伝わってきた。「特にラストの曲がいい」と何人かのミュージシャンから聞いた。

【SGD】

昨年解散したアジアンヘッド(SGD)が、わざわざ再結成して登場して下さったことには、本当に感謝の気持ちで一杯だ。
完成度の高いポップセンス、隙のないアンサンブルで、観客をグッと魅了した。

NAOちゃんのボーカルもとても素直で魅力的だった。Shigeさんに「今後はもう再結成しないの?」と尋ねたら、「好きな時に好きなように集まって、ゆる~くやります」とのこと。それはそれで音楽との関わり方としてひとつの正解だと思う。

【Evi’s】

Evi君とは、色々な形で場所を変え、企画を変えての長い付き合いとなるけど、今回は珍しくエレキをアコギに持ち替えて、しかも相方とコンビを組んでの出演だった。
「キャラメル・マキアート」は名曲だと思うし、お約束の「うまい棒による餌付け」もあった。エレキプレイに定評のあるEvi君だけど、後で聞いたら「いやぁ~やっぱりアコギになるとグダグダですよ~」とKUMUちゃんみたいなことを言っていた。ロックを下地にしたEvi’sのサウンドは、またこのイベントにひとつの彩りを添えてくれた。

【ヌッキー@リュウ】

何となく若手の流れができたところに、ヌッキー@リュウが登場し、突然ナガブチだ。でもリュウちゃんだったら、この流れをグッと自分の方に引っ張ってくるだろうなと確信していた。そうした案の定、物凄い「攻め」のステージを展開し、グッとお客さんのハートをつかんでしまった。この力は本当に経験だけができる力だと思った。リュウちゃんはナガブチの音楽が実は素晴らしいんだよということを伝え、そして自分の持つ音楽力みたいなものを伝えきった。
後でNAOちゃんが「凄いですね~、あの方プロなんですか?」と感激していた。いえいえ、普段のリュウちゃんはサラリーマンですよだ。

【オトナの事情で名無しさん】

そしてトリは、来年大手レコード会社からメジャーデビューが決まっている関係上、ちょっと名前を出すことができない「オトナの事情で名無しさん」。
ずっと弾き語りが続いた今日の日吉NAPで、最後だけCDオケというのも、「何でもアリ」という僕のコンセプトにピッタリだった。
出演交渉をする中で、「実はその日デビッド・サンボーンのライブなんですよ~」という彼女に「いいよいいよ、最後にしておくから」とかなりなガブリ寄りなコトをやっての駆けつけてもらったけど、色々な意味で今回のイベントに呼んでよかったなと思った。名無しは名無しだけど、影から応援します。

というわけで、6時間という時間を感じさせない、バラエティに富んだイベントだったと思う。
プロを目指す人、プロになることが決定した人、バンド解散してソロ活動を始めた人、バンド解散してあとは時折再結成して楽しくやってゆこうという人、仕事のかたわら音楽活動を続ける人、ソロ活動に自分を見出して楽しくやっている人、趣味で音楽を楽しんでいる人、そういう色々な音楽に対する「関わり方」、それを見ることができたことは、出演者相互の刺激になったと思うし、何よりもひとつとして被るような音楽性がなかった。

考えてみれば、これって教室のライブでやっていることなのだけどね。

後で日吉NAPの竹村さんからこんなメールを頂いた。
失礼ながらその内容が素晴らしかったので、ご紹介させていただく。
「出演者のどなた様も音楽を楽しむという気持ちが伝わるすてきなパフォーマンスでした。スタッフ一同、仕事冥利に尽きる一日でした」。
とても嬉しいお言葉だ。

日吉NAPさん、出演された皆さん、そして何よりもライブに足を運んで下さった皆さんには熱く御礼申し上げます。
なお、このライブで発生した利益に関しては、チラシの経費、ガソリン代、駐車場代を引いた上で、すべてミュージシャンの方々に還元させて頂きました。

ライブレポ

Posted by spiduction66