豪雨の爪痕

平成23年7月新潟・福島豪雨」によって寸断されていた国道252号線が一年ぶりに復旧したのが7月23日のことだった。
国道252号は福島県の会津若松に始まる。山間の只見町を抜け六十里越(ろくじゅうりごえ)の峠を経て新潟県に入り、日本海に面した柏崎に至る道だ。
国道252号全線再開通のお知らせ
以前から友人の羊子さんがこのあたりをしばしば走っていて色々と記事にしてくれていた。只見川ぞいの山あいをうねうねと入ってゆく道には何とものどかな雰囲気がありそうで、ぜひ走ってみたい道だった。
会津から横浜に戻るには、磐越道と東北道という2本の高速で帰ればわけはない。
それを大回りをして新潟県の小出から関越道で帰ろうという試みだ。山形に旅行へ行ったはずなのに会津の山奥で炭酸水を飲んでいたのはそんな理由からだった。

会津若松からは快適な道がずっと続いていた。

只見川やJR只見腺と横目に道は山奥へ山奥へと続いてゆく。

小学校の2年だか3年だかの時、父に連れられて妹と3人でこの只見腺を乗りに行ったことがある。
どこに行くのも車を使っていた父にしては珍しい旅だったので妙に印象に残っている。車窓からの景色が綺麗だったのと、乗り合わせたおばちゃんにみかんをご馳走になったのと、やたら「会津なんとか」という駅が多かったのを覚えている。
その時は小出から会津若松へと乗ったのだけど、今回は逆方向へと車を走らせている。

「川に橋が落ちているみたい」と教えてくれたのは助手席でパシャパシャ車窓の風景を撮影していたカミさんだった。
場所は「本名」という駅を越えて本名ダムにさしかかる所だった。

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流出した第六只見川橋梁のトラス桁
横目で見るとダムにさしかかる手前の河原に巨大な鉄橋が横たわっている。「何だこりゃあ」とダムの駐車場に車を停め確認しに行ってみた。
第六只見川橋梁会津若松側
いやあ驚いた。JR只見腺の鉄橋がまるごと落下していたのだ。
実は255号が不通だったのは知っていたけど、JR只見腺もこのように一年以上も寸断されているとは知らなかった。
「知らないってことぐらい、罪な話はないね」と思わずカミさんにこぼした。
この「平成23年7月新潟・福島豪雨」のことでも、例えば東日本大震災の翌日に発生した「長野県北部地震」のことでも、そういう災害があったことを知っているだけで、具体的な被災状況についてはかなりザル穴的にしか把握していない。
昨年は震災報道や福島第一原発事故の方に目が行ってしまったのだろう。同じ福島の東と西の両側でここまで大変な事態になっているとは思ってもいなかった。
これは僕だけに限らないのではないだろうか?
只見では道路だけではなく鉄道までも寸断された、ということはこの地域は完全に孤立した状態が長期間あったわけだ。そして今なおこのように鉄道は復旧していない。
そういう地元の方の苦労や困難を思いながら旅をするのと、なーんにも考えずに旅をするのでは、意味が違うよねと言いたかったのだ。
例えそれが自分を納得させるためだけのエレメントに過ぎないとしてもだ。
流出した第六只見川橋梁全景
調べてみたら、この鉄橋は「第六只見川橋梁」と言うらしい。
本名ダムの真ん前にかかる橋で、鉄道ファンには絶好の撮影場所だったようだ。

(落橋前の第六只見川橋梁)

この先、266号を進むにつれて様々な被害状況を目の当たりにするわけだけど、それはまた今度。