運とか偶然とか

月曜日の話。
次女の描いた絵が横浜市の「総合文化祭」で優秀賞を受賞したということは聞いていたのですが、半年を過ぎてようやくそれが展示されるというので、関内の教育文化センターまで行ってきました。
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(娘の作品)
月曜日が最終日で、しかも会場についたのが終了30分前でした。広い会場の目立つ場所に作品は展示されていました。与えられた「心のとびらをあけよう! 未来へはばたけ 横浜の文化」というテーマをもとに、彼女なりに考え、それを形にしたのでしょう。

公立中高の総合文化祭ということで、何百点もの作品が展示されているのですが、やはり親バカです。何度も通り過ぎては見て、また戻ってきては見てを繰り返していました。

そんな時です。
ふと、娘の作品の隣(右上)の作者名を見て驚きました。知り合いの「ゆきのちゃん」と同姓同名なんです。「ゆきのちゃん」は「有希乃路央(ゆきのじお)」という名前で音楽活動をしている天才少女歌手です。
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この作品の音符を配した絵柄がなんだか「ゆきのちゃん」っぽい。

そこでお母様に電話してみました。
「もしもし、お嬢さんって〇〇中ですか?」
「はい、そうです」
「じゃあ間違いない!いま文化センターにいるんですが、僕の娘の作品の隣に出展されていますよ。ご覧になられました?」
「えっ、知りません!」
「(時計を見ながら)うわぁ!あと10分で終了ですよ」
「本当ですか!今から間に合わないかなぁ」

というところで電話は終わったのですが、直後にメールで「いまタクシーで向かっています!」というメールが。さすがは行動力のあるお母様とお嬢さんです。

間もなく会場は終了となるため、すでに会場内に脚立が運び込まれ、撤去の係員が動きだしている状態でした。僕は係の方に彼女の作品周辺の絵の撤去を遅らせて頂くようにお願いしました。
「ああ、いいですよ。別のところから撤去してゆきますから」と快く引き受けてくださいました。

終了5分後、会場にゆきのちゃん母娘が飛び込んできました。
いやはや、こんなに早く到着するとは思いませんでした。
後で聞いたら「タクシーの運転手さんの運転が神業だった」とのことでした。

僕は「運」ということを思いました。
「運」を呼びよせるのもまた実力なんだと思います。
ゆきのちゃんにはそういう力があって、たまたま僕の娘の作品のすぐ隣に掲示されていて、いい係員の方がいて、神業をくりだすタクシーの運転手さんがいて....それが、この栄えある場所で彼女と自分の作品との邂逅を生み出すことができたのです。
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(二人の作品は偶然にも隣に並んでいた)

「偶然」という言葉もまたそうでしょう。
僕の娘の作品も、彼女の作品も、単に机の上で頭でひねっているだけでは生まれません。芸術はそこに「発想」とか「想い」とかが偶然にもピタリと合致した際に、初めて本当にいいものが生まれます。

たまたま会場で作品が隣り合った二人の少女たち...僕の娘とゆきのちゃんのことですが...二人の少女たちの未来は、絵にせよ音楽にせよ無限の可能性を持っています。
可能性を広げる方法は色々あります。もちろん絵でも音楽でも練習を重ねることも大切ですが「感じ取る量を増やす=感性を豊かにする」ことも大切です。
窓から見える何気ない風景、流れる何気ない音楽からいくつの事柄を感じ取れるか?人によってはそれは一つですが、人によってはそれは100にも200にもなります。
そんな中で「私には(僕には)これこれこういう人間だから」「才能がないから」とか思って諦める人がいますが、それは寂しいことです。
そういう人はまずひとつの風景(音楽でもなんでもいい)から感じられること、思いつくままに書き出してみるといいでしょう。新たな自分を発見できるかもしれません。

この可能性を最大限に押し広げる努力をすれば、おのずから「運」も「偶然」も呼び寄せてゆくことでしょう。