「くまチャリ」を終えて

被害の多少はあるものの国民の半数近くが体験した東日本大震災によって、この国の人たちはいい意味でも悪い意味でも「学習してしまった」と思うのです。
その学習能力の高さゆえに今回の熊本大地震では、それが様々な「理屈」となって発揮されているように思います。
もちろん理屈を述べやすいSNSという環境のせいもあるのでしょう。高尚な政治発言、原発に対する不安、ボランティア機能に対する意見、不謹慎非難、売名非難、物流やインフラに対する非難、自衛隊問題、オスプレイ問題...

考えてみれば、今回被災された熊本を中心とした方々は、地理的には東日本大震災と無縁に近い場所におられた。
それに対して多少なりとも大震災の体験した人たちが、経験を元にあれだこれだとアドバイスしたりするのはまだいい。まだいいけど、あれだこれだと意見申し上げ、しまいには今必要なもの、今やらなきゃならないことを無視して自己の論理を展開するようになってしまった。
まるで葬式の席上で親戚のおじさんおばさんから説教されるような感じ。それは心の痛みを分かちあうのとは程遠いと思うのです。

震災直後、シンガーソングライターの「」君から簡単なメールが来ました。

「近々、何かしらの形でチャリティライブを企画しませんか?」
「どうもです。熊本かい?いいよ(⌒∇⌒)」

わずか2行のやりとりで、このイベントは始まりました。
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喉からの話は願ってもないことでした。
前回の東日本大震災の直後にやった3つのイベント。
「Spring Heart For Japan」
「ひまカラ」
「東京音力」
を振り返って「今回は直近でパッとできて、もっと気軽に誰もが参加できるイベントにしたい」という気持ちがあったからです。

喉は「オープンマイク」のイベントをいつもやっています。
多分今回もそれを提案してくるに違いないでしょう。
やり方としては一番いいと思ったのです。
くまチャリ リーフレット
(「くまチャリ」リーフレット。完成直前に「くまもん」著作権フリーの報道が入って、急きょ彼にも参加して頂いた)

中には「こんな時に音楽のイベントなんて不謹慎だ」と言う人もいるでしょう。実際、喉は直接的に被害に遭っています。
でも「不謹慎不謹慎」と騒ぐ人たちは、僕に言わせれば残念な人たちです。彼らは世を混乱させることには長けていますが、世を動かすことに長けていないだけの人たちです。

僕も喉も考えていることは一緒でした。
「こんな時だからこそ歌え!」ということです。

もうひとつ言えば、僕は音楽の仕事をしています。
喉もシンガーソングライターとして、音楽団体「ZAZ@旅団」の団長(?)として活躍しています。
現地へ行ってボランティアができる人はしたらいい、現地へ物資が送れる人は送ったらいい、
我々にベストな対応は「音楽をするという事で、熊本地震災害の被災者を応援できるイベントを作り上げる」ことなんです。
そしてそこに参加する方々は「歌う」あるいは「参加する」という行為が応援することになるわけです。

先日も被災者を救援する方法について、ある方とこんな話になりました。その時に、僕はこう申し上げました。
「極端に言えば、日々働くという自分がいま行っている行動をそのまま続けたらいいんじゃないでしょうか。歌う人は歌えばいいし、農業に従事する人は農業をすればいい。サラリーマンは会社へ通えばいいし、ラーメン屋さんはラーメンを作ればいい。そこから持ってかれる税金は...精神的には抵抗もありますが.....回り回ってまあ復興に役立つわけですしね。もちろん直接寄付するのが一番いいのですが、世の中のお金の流れひとつみても、こんな風にいま自分がやっいる事を粛々とやってゆくということはとても大事なことだと思うんです。例えばもし求職中の人がいるならば、仕事を得るためのアクションを起こすことも長い目でみれば被災者の応援につながると思うんです。自分は何もできないって悲しむよりも、今できることをやればいいと思います」。

長くなりましたがリーフレットに「理屈じゃない とりあえず歌え!」という言葉を入れたのには、こんな想いがあったんです。
普段、自分はあまりこういう言葉の使い方をしない人間ですし、実際これは東日本大震災の時に思いついてボツにしたコピーだったんです。
そこには喉の想い、自分の想いが増幅されて、そういうことになったことは間違いありません。

そして昨日、ミューズポートボーカル教室&ZAZ@旅団YOKOHAMA THREE S共催となった「くまチャリ」は、予想をはるかに上回る41名という参加者によって、会場はパンク寸前まで行ったのでした。
あっ「くまチャリ」は「熊本救援チャリティ」の略です。あまりにも安易なネーミングセンスに喉に却下されかけた所でしたが「他にそれを上回るネーミングが思い浮かばない」という理由により最終的に決まったものでした。
くまチャリ
ステージデビューしたての音楽ユニットで参加してくれた方がいました。チュニジアのメタルも出てきました。デジモンも出ました、山手線の発車メロディはなぜか三味線で奏でられました。生徒さんも元生徒さんもたくさんかけつけてくれました。見るためだけに来てくださった方も多数いらっしゃいました。最後はなぜか「Wi-Fi」の合唱となりました。なんだこの空気すげー。

最後に謝辞。おいで&参加頂いた皆さん、ありがとうございました。
喉君、素敵なコラボ光栄でした。あなたがいなければこのイベントは実現しなかったでしょう。
ZAZ@旅団の皆さん、独自の音楽世界をぶちまけてくれてありがとうございました。PAまわりも助かりました。
イベントの趣旨を理解して下さって協賛までして頂いたYOKOHAMA THREE Sの川本社長、ありがとうございました。
目に見えない所でお手伝い頂いたすべての皆さまに感謝します!