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8月, 2009
流れ橋 ~上津屋橋~
- 2009-08-21 (金)
- ぶうらぶら
暴れん坊将軍がパッカパッカと馬でやってくる、「誠」の旗をおしたてて新選組がやってくる、うっかり八兵衛が「ご隠居~、おいてきぼりはひどいですよ~」と走り去ってゆく、そんな光景が下の画像から浮かんだとすれば、それは正解だ。

「流れ橋」は京都府の南部、木津川にかかっている。れっきとした県道…いや府道で、京都府道281号(八幡城陽線)の一部として八幡市と久御山町をつないでいる。この橋が有名なのは、昭和28年の架橋以来、数多くの時代劇で使われてきたためだ。
大きな地図で見る上津屋橋(こうづやばし)という。こんな橋だけど地元の人にとっては生活になくてはならない橋のようだ。頻繁に原付や自転車が渡っていった。何しろ他に人間が歩行できる橋は下流の木津川大橋まで2.5km、上流の京奈和道橋まで2kmも離れている。

なぜ「流れ橋」と言うのかについては上記ウィキペディアの記事や、aquaさん(?)のサイト→時代劇の風景→「流れ橋」に秀逸な記事があるので書きようもないのだけど、あえて書くとこうなる。
「踏み板を橋脚に固定していないため、川が増水すると、踏み板だけが流れてゆく構造となっている。増水時の水圧や滞留物の力を逃がすことで橋脚が壊れるのを防ぎ、それによって再度架橋することをたやすくしている橋」。

橋というものは増水などですぐに壊れてしまうもの。だったら壊れやすくして、一番大切な橋脚だけを助けるようにしよう。
そういう発想だ…..これはこれで素晴らしい発想だと思う。

実際には、橋げたはすべて下流に流れていってしまうのではなく、下のようなワイヤーで数ブロックごとに吊り下げるような形になるため、壊れても再利用が可能なんだそうだ。Aquaさんのサイトの「木津川 下流」という記事には2004年の台風で被害を受けた「流れ橋」の画像があるので必見だ。

夏目漱石の「吾輩は猫である」にこんな文章がある。
西洋人のやり方は積極的積極的と云って近頃大分流行るが、あれは大なる欠点を持っているよ。
川が生意気だって橋をかける、山が気に喰わんと云って隧道(=トンネル)を堀る。交通が面倒だと云って鉄道をしく。それで永久満足が出来るものじゃない。(中略)西洋の文明は積極的、進取的かも知れないがつまり不満足で一生をくらす人の作った文明さ。
日本の文明は自分以外の状態を変化させて満足を求めるのじゃない。(中略)山があって隣国へ行かれなければ、山を崩すと云う考を起す代りに隣国へ行かんでも困らないと云う工夫をする。山を越さなくとも満足だと云う心持ちを養成するのだ。

そんな日本人的な「消極的工夫」、そのひとつの例が「流れ橋」だったと思う。
帰りがけに近くの公民館らしき建物で、地元八幡市で採集された「やわた竹」の細工物の展示会をやっていた。

「やわた竹」っていうのは、かつて世界的に有名だった。エジソンが白熱電球を発明した際、耐久性が最も優れているという理由から、この八幡の竹を電球のフィラメントに採用したのだ。19世紀の終わりごろの話。
電球と流れ橋……新しいものと古いもの、積極的な文明と消極的な工夫、対極の精神がひとつの街にあったというわけだ。
東名高速道路の崩落地点を迂回した話
- 2009-08-19 (水)
- 管理人のたわごと
11日の夜から京都へ行こうと思っていたら、早朝の地震で東名高速が崩れおちてしまった。
とりあえず「なあに、よくあることさ」と呟いてみてから考えた。
ニュースでは京都方面への下り線は静岡ICから菊川ICまで通行止と言っている。距離にして40km程度、この区間を一般道を走らなければいけない。
それならば中央高速でという選択もあった。だけど横浜から中央高速の八王子ICまで行くにはあまりにも手間がかかりすぎる。さらに中央高速ルートだと京都まで30kmは余計に迂回しなければいけない。東名高速と一般道を併用させて走っても、そんなに時間的には変わらないのではないかと思った。

それともうひとつ。
静岡市付近を地図で確認してみたら、この付近は国道1号のバイパスがかなり整備されているようだ。自動車専用道路が通行止区間をほぼカバーしているようにも見えた。静岡IC付近の静清バイパス→岡部バイパス→藤枝バイパス→島田金谷バイパス→日坂バイパス→掛川バイパス→袋井バイパスという具合に国道一号バイパスは連続してつながっているようだ。これを利用すれば、菊川ICどころかもっと先の袋井IC付近までスムーズにゆけそうにみえた。これを使わない手はないと思った。
深夜1時30分に横浜を出発した。
東名高速は恐ろしくガラガラだった。トラックの量は異常とも言えるほど少なく、バスに至っては皆無だった。中央高速を選んだのは明らかだった。いつもなら片側二車線になる御殿場IC以降は深夜でも団子レースになるのが普通だったけど、この夜ぐらいスムーズに走れたことはない。後で知ったけれどこの日の東名の交通量は前年比50%だった。
東名高速の清水ICで降りたのは3時過ぎだったと思う。ひとつ手前の清水ICで降りたのには理由がある。静岡ICでは出口渋滞が起きていたし、このICはバイパスから離れている。いっぽう清水ICは静清バイパスと直接連絡していた。
清静バイパスは首都高速みたいな高架道路で渋滞もなくスイスイと進んでいった。
「これは正解だよ。そんなに時間をかけずに菊川まで抜けられそうだ」とカミさんに言う。
「抜け道っていうのは、こうやって行くものさ」とまで思った。
少なくともここまでは良かった。
状況がおかしくなったのは、岡部バイパスの宇津谷トンネルを越えた付近だった。
突然の渋滞に巻き込まれ、車は全く動かなくなった。
一瞬頭の中に、刀で切られた血まみれの按摩の形相がよぎった。
私のトラウマのひとつに「日本怪談劇場」の第四話「怪談・宇津谷峠」に登場する文弥という按摩がいる。百両の金目当てに文弥は行きずりの男に殺された、やがて文弥は幽霊となっての男の前に現れる。白塗りの化粧に血まみれの形相、当時小学校の低学年だった私は完全にトイレに行けなくなった。彼は京都へ向かう途中、この宇津谷峠を越えた付近で殺されたのだ。
ノロノロと進むような普通の渋滞ではなかった。完全に停止して思い出したようにチョロっと動く。やがて電光表示板によって、この渋滞の原因が藤枝バイパスのトンネル内で発生した自動車事故だと判明した。
「なあに、よくあることさ」と呟いた。
「馬鹿野郎」とも呟いた。
東名が通行止となり、国道一号藤枝バイパスも通行不能。その瞬間から、この渋滞にいる車たちは「路上難民の列」となりはてた。

一般道ならばわき道に逃げることもできるけど、バイパスだからそうはゆかない。ようやく30分かけて1500m先の岡部にある内谷新田の交差点でバイパスから抜け出すことができた。
高速もダメ、バイパスもダメということで、ほとほと弱り果てながら再び地図を覗き込む。
そうしたら一本の道が浮かび上がってきた。国道150号だ。
内陸を走る国道1号に対し150号は海側を浜松まで走っている。途中から御前崎へと南に大きく迂回はするものの、大井川までは東名高速とほぼ並行して走っている。150号を利用して大井川を越え、そこからは高速に並行している県道79号を利用する。そうすれば菊川ICまでそう苦労せずにたどりつけそうだった。
そこで車を南東方面へとむけ、閉鎖されている東名の焼津ICを通り過ぎて国道150号へと入った。
通行禁止区間をつなぐ幹線道路だから、さぞかしここも渋滞しているだろうと思ったら、道はガラガラだった。一気に大井川を越え、県道79号へと入った。
東名高速の吉田IC近くの交差点を直進する。高速の崩落現場がどうもこの付近らしいということはわかっていたけど、その現場を探すつもりはなかった。まだ京都まで途方もない距離を残していたし、崩落現場どころか菊川ICまでたどり着ける確証もなかったのだ。
曖昧な地図と、道路標識だけを頼りにひたすら県道79号を走る。そうしているうちに見渡す限り茶畑が広がる小高い台地に出た。
夏の夜は短くて、午前4時50分ごろだけど、こんな写真が撮影できた。

早朝から路上で立ち話しているヤンキーの兄ちゃんに道を尋ねたり、地震の影響で屋根瓦が崩落している民家を横目に見ながらようやく菊川ICにたどり着いたのは5時10分過ぎだった。通常なら35分で通り過ぎるルートを正味2時間10分かけて通過したことになる。
菊川ICの直前までは全く単独で走行していたが、ここへはどこからともなく車が集中してきていて、IC前ではちょっとした渋滞となっていた。様々なルートでここまでたどり着くことのできた、無事に路上難民から生還できた車とともに喜びをわかちあいながら東名高速に入った。
それでも、京都まで250kmの道のりが残っていた。


(この2枚は帰りがけ、前日に仮復旧したばかりの崩落現場を撮影したもの)
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