上高地西糸屋山荘

子供たちは8月のはじめから、僕の親父と一緒にアメリカへ行ってしまった。
サンフランシスコにいる姉家族のところへ2週間のホームステイ。
この日のためにずっと貯金してきたお金も飛行機とともにドドーンと飛んでいった。

僕はこの22年間というもの海外に行ったことがない。アメリカも行ったようで行ってないようなものだ。カミさんとの新婚旅行も「あってないようなもの」だったのだから、実にうらやましい話だ。
マジで楽しそうな子供たちにジェラシーを感じた。

でも僕には日本という恐ろしく風光明媚な国がある。
子供から開放された僕とカミさん、そして僕の母親の3人で長野県の上高地へ「山篭り」することにした。
僕とカミさんとは2年ぶり3回目、僕と母親とは実に40年ぶりの上高地となった。

宿泊したのは、

上高地帝国ホテル....というのは真っ赤なウソである。

上高地西糸屋山荘は河童橋から120mぐらいのところにある。今回で2度目の宿泊だった。
かつて冒険家の植村直己が居候していたのは有名な話。もともと山小屋から発展したからなのだろう。上高地の河童橋近辺ではもっとも宿泊料の安い宿だ。
どのぐらい安いかといえば、上高地帝国ホテルの半額もあれば、充分にお釣がくる。

時代の流れとともに、観光客相手の宿へと変化していったが、現在でもそうした登山客を相手にした格安の宿泊施設を併設している。
スタッフは気さくで対応もよい。アルイバイトの子たちが本当に山が好きで働いているのが伝わってくる。あんまりオーバーなサービスというのは好きじゃないので、気軽なノリの方がこちらもくつろげる。

部屋は和室8畳で、梓川に面している。最高でも22度の上高地では、涼しい空気が網戸から流れ込んでくる。

料理は本格的な日本料理と若干の西洋料理のミクスチャー。美味しくてその量も尋常じゃない。3人程度の宿泊の場合は、夕食を部屋まで運んでくれる。連泊の場合は毎日料理の内容が変化する。お風呂は自然の雪解け水を利用しており、サウナもある。
嬉しいのは談話室が併設していること。

山に関する書籍や映像資料などがどっさりあるのでボケーっと滞在するにはぜんぜん困らない。

売店で売っているアップルパイ(オーナーの奥様が松本市内のベーカリーから陸送している)はまるごと4分の1のリンゴがぎっしり詰まっていて実に美味しい。
売店の横にはちょっとしたカフェがあって、コーヒーなどドリンク類が無料で提供されている。
梓川と白樺の林を眺めながら飲むコーヒーが美味しいんだ、これが。

上高地へ行くと決まった時から「ここでコーヒーを飲むのだ!」っていうイメージを頭に描きながら働いてきた。
お盆までに仕事をいくつか終わらせて、休みとなって、長野まで車を走らせて、沢渡まで行って車を駐車して、バスに乗って上高地へ行って、上高地のターミナルから歩いて、西糸屋山荘にチェックインして、一杯のコーヒーを飲む。

その一杯のコーヒーは自分にとっては、最高の贅沢で最高の幸せなんだと思う。

ぶうらぶら

Posted by spiduction66