渋谷駅の迷子

自分でも記憶がないから、多分3歳ぐらいの頃のことだと思う。
僕は渋谷にある東急百貨店で迷子になったことがあるらしい。

当時の僕は武蔵小杉に住んでいた。
両親に連れられてイモムシみたいな緑の電車(ハチ公口に展示してあるやつ)に乗って、渋谷へはよく買い物に行ったものだ。
東急百貨店はそんな行き先のひとつだったようだ。

なにしろ面白そうなものがあると、弾丸のように走ってゆく子供だった。
いっぽう親父もお袋も無頓着なところがあったから、しょっちゅう迷子になっていた。
この時も、よっぽど惹かれるものがあったに違いない。

自分の息子がいないことに気付いた親父とお袋は店内を探し回った。
店内アナウンスでも呼びかけたらしい。
ところが僕は忽然とお店から蒸発してしまった....

弱り果てた親父とお袋は、ついにハチ公前にある交番に駆け込んだ。
すると、そこに自分の息子がいるではないか。
息子はお巡りさんから飴玉を貰って、ケロっとしながらそれを舐めていたそうだ。

親父とお袋がお巡りさんから聞いた話は、こうだ。

東横線の渋谷駅ホームで、停車している電車に乗ったり降りたりして遊んでいる子供がいる。
駅員さんがその様子を見ていると、どうも保護者がいる気配がない。
そこで「おとうさん、おかあさんは?」と尋ねると「うん、デパートでおかいものしてるよ」。
こりゃあいかんと、交番まで連れていって保護してもらった、というわけだ。
2004年の渋谷駅
(渋谷駅ホームを撮影した写真はこれが唯一のもの。2004年1月30日、桜木町行きの最終日)

「こっちの心配をよそに、ニコニコしながら飴玉を舐めているお前を見て、あの時ほど腹が立ったことはない」そんな風に今でも言われる。

もしもあの時に電車が出発していたら、と思うとゾッとする。
「横浜」で沖給仕として働かされていたかもしれないし、異人さんに売り飛ばされていたかもしれない。

そんな想い出のある渋谷駅地上ホームも今日で営業を終え、明日からは地下駅となる。

コメント

  1. せろり より:

    先週、下北沢駅も大きく変わりました。
    本来は下北沢駅に降りなくてもよかったのですが、その日は、出来たら練馬区立ふるさと文化館に立ち寄りたいと野望を持っていたので井の頭線に乗り換えようと降りてしまいました。
    大変でした。
    結局、本来の目的地に遅刻してしまうことがわかったので、「アトムが飛んだ日」を見るのは諦めました。そんなことなら、下北沢に下りなければ良かったと後悔しました。

    ところで、キタリストの天野清継氏と天野丘氏は何か関係があるのですか?
    すみません、すごく唐突な質問で、ごめんなさい。

  2. spiduction66 より:

    >せろりさん
    下北沢も地下化ですね。大きくあの街の風景も変わるのでしょう。
    でもカジュアルな雰囲気だけは変わって欲しくないものです。
    二人の天野さんの関係はわかりません。すいません。

  3. 渋谷駅も下北沢駅も、変わってからまだ行っていませんが、「下北沢駅の通路の狭さは異常で、早く変われば良い」と思っていました。

    町の再開発については、いろいろと意見もあるでしょうが、超高齢化時代に向かう今日、それも仕方のないことだと私は思います。
    いずれ高齢化して、皆移動が不自由になるのですから、エスカレーター、エレベーター等、様々な配慮は当然のことだと思います。

  4. spiduction66 より:

    >さすらい日乗さん
    おっしゃる通りですね。
    東京の風景は日に日に表情を変えていってしまいますが、失われてゆく風景がある一方で、バリアフリー化も着々と進んでゆく。
    これはノスタルジアとそれだけでは済ませられない現実とのダンスなんでしょうね。

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