三木鶏郎と異才達

かつて、戦後の荒廃した時代、
ラジオからこんな曲が流れてきた。

「南の風が消えちゃった(昭和20年)」
♪南の風が消えちゃった
北風吹いてる焼跡に
建てたわが家はトタン張り
雨が降ったら水が盛り
風が吹いたら屋根が飛ぶ
どてもこれじゃあやってけぬ
うわー寒いよ、この冬、焚くものが無い、ハクショイ
風をひくのも無理はない
着のみ着のまま焼け出され
夏の背広が一張羅♪

「僕は特急の機関士で(昭和25年)」
♪僕は特急の機関士で
可愛いあの娘は駅ごとに
いるけど三分停車では
キスする暇さえありません
東京、京都、大阪
ウーポポ♪

かつて、テレビをつけると、
こんな曲が流れてきた

♪僕はアマチュアカメラマン
素敵なカメラをぶら下げて♪
(昭和26年=さくらフィルムCM曲)
♪ワワワ、輪が3つ♪
(昭和29年=ミツワ石鹸CM曲)
♪明るいナショナル みんな、うち中、電気で動く♪
(昭和30年=松下電工CM曲)
♪うちーのテレビにゃ色がない
となりのテレビにゃ色がある♪
(昭和40年=サンヨーテレビCM曲)
♪くしゃみ3回ルル3錠♪
(昭和32年=三共製薬CM曲)
♪家中みんなで、キリン、キリン♪
(昭和31年=キリンレ麦酒CM曲)
♪トムとジェリ~仲良く喧嘩しな♪
(昭和38年=「トムとジェリー」主題歌)
♪ビルの街にガオー 夜のハイウェイにガオー♪
(昭和38年「鉄人28号」主題歌)

これらの曲を作曲したのは三木鶏郎(みきとりろう)という人物だ。
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(僕が持っている三木鶏郎著「続、冗談十年(昭和29年刊)」)

戦後の日本に彗星のごとくあらわれ、作曲家兼放送作家としてラジオ番組「冗談音楽」「日曜娯楽版」「ユーモア劇場」などといった番組の数々を製作した。音楽と寸劇を織り込んだこれらの番組は、軽妙な社会風刺とユーモアを織り交ぜており、一説には80%とも90%ともいう聴取率を記録したといわれている。しかし、吉田茂などを中心とした当時の政府やGHQなどにらまれて、その多くは中断されてしまった。

そのご、国産初のCM曲「僕はアマチュアカメラマン」を製作した後は、仕事をCM曲やTV主題歌にシフトしていった。平成6年(1994年)死去。

その三木鶏郎のトリュビュート・ライブに昨晩家族で行ってきた。
題して「Sing with TORIRO 三木鶏郎と異才たち」場所は銀座の博品館劇場。
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まず出演者の面々が凄い。
鈴木慶一(ムーン・ライダースの親分)
細野晴臣(はっぴいえんど、YMOほか)
ハナレグミ(Super Butter Dogの人)
奈歩(元Petty Booka、森山直太朗のお姉さん)
湯川潮音
高野寛
今井英明(ロッキングタイム)
畠山美由紀
小池光子(ビューティフル・ハミング・バードの人)
首里フジコ

ライブの冒頭で、当時のCMフィルムが流され、いよいよ本番。鈴木慶一らによるトークを交えながら、全22曲が歌われた。

とりわけよかったのが奈歩と湯川潮音による「ポコタの花」と「ポカンポカン」。元々は双子のデュオ”ザ・ピーナッツ”が昭和30年代に歌っていた曲だ。声質が似た二人によるデュエットという難しい課題を、この二人は見事こなしていた。「誰も知らない」とデュエットが始まった瞬間には総毛が立った。

また、歌の上手さでは小池光子が歌った「くるみ一つを」がピカ一だったように思う。また、畠山美由紀はかつて中村メイコが多数の声色で演技をしながら歌った「田舎のバス」を見事に歌いこなしていた。鈴木慶一と高野寛による「吟遊詩人の歌」も素晴らしかった。

細野晴臣が何曲かう歌うことを期待していたのだが、残念なことに「僕は特急の機関士で」にチョコっと参加してワンコーラス歌っただけだった。でも鈴木慶一といい細野といい、神様みたいな人物を見れただけでもよかった(二人tおも開演前にロビーをフツーに歩いていた。思わず拝んでしまった)。

会場に来て驚いたのは観客の中で圧倒的に多かったのが20代の男女だったということだ。いっぽうでリアルタイムでトリローを体験した70代の観客もいたりした。「懐かしいなぁ」と言っているアメリカ人の老人もいた(GHQの関係者か?)。最年少は僕の次女(6つ)ということを考えると、実に幅広い世代が楽しんだライブだったと思う。

15年来のトリローファンである僕、僕に引きずり込まれて10年来のファンである家内、そして否応なしに家で聴かされていた子供たちにとっては、このライブ情報は晴天の霹靂だった。21世紀になってから、こんなライブが行われるとは予想だにしなかったからだ。

CDでしか聴いたことのない、大半がモノラルでしか存在しない音の数々が、生演奏しかも目前で再現されるなんてことは、そうあることじゃない。それだけでもモトが取れたライブだった。

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コメント

  1. TOPS より:

    はじめまして。湯川潮音や畠山美由紀ファンのTOPSと言います。(ちなみに年齢は高野寛と惣一郎さんの間、今回は客席に若い人が多かったのに驚きました)僕は最終日の最後の公演を見ましたが、とても素晴らしかったです。思えば去年も、鈴木惣一郎さんにはワールドスタンダード20周年記念ライブでやられました。来年もまたと期待してしまいます。

    さて、僕も奈歩&潮音の2曲と畠山美由紀さんの「田舎のバス」がもっとも印象的でした。同じ曲をやった坂本冬実さんは、さぞやり難かったのでは。(昨日カラオケで「田舎のバス」をセリフ入りで歌ったらバカ受けでした)。あと、今野英明さんがいいキャラクターを発揮していました。お祭り男と言えば、東の佐藤竹膳、西の奥田民生というのが僕のイメージですが、今野さんは新お祭り男になる資格ありと見ました。

    惣一郎さんがプロデュースしたCDもなかなかでしたが、鈴木惣一郎~細野晴臣ラインにはこれからも期待しています。

  2. spiduction66 より:

    最終日にゆかれたのですね。うらやましい。
    より盛り上がったのではないでしょうか。それと細野は相変わらず「僕は特急」だけの出演だったのでしょうか?

    カラオケで「田舎のバス」を歌ってしまうTOPSさんはともかく、今回のライブを鈴木→細野ラインから来られた方も多かったのではないかと思います。
    トリローは細野が提唱している無国籍音楽の原点みたいな人だと思うし、J-POPの原点みたいな人でもあるので、多くの人がトリローに接することができたのが良かったと思います。

    最後になりますが、狂言廻しをやってくれた今野さんにも、頼もしいものを感じました。ホントお祭り男になりそうな方でしたね。

  3. TOPS より:

    最終回は、出演者の皆さんもこの時間が終わるのを心惜し
    むかのようなコメントが聞かれました。やっぱり、皆さん
    気合が入っていたのでしょう。
    細野さんは「僕は特急の機関士で」1曲だけでしたが、
    アンコールは出演者全員が客席のほう(入り口側)から
    列になって再入場し、もう一度「僕は…」をやりました。

    ちなみに去年のワールドスタンダード20周年祭りでも、
    スペシャルゲストの細野さんは1日1曲だけでした。
    2日目は「stella」をワールドスタンダードに湯川潮音、
    イノトモなどのコーラス隊をバックに歌いましたが、今
    でも強く印象に残っています。

  4. spiduction66 より:

    僕らの回はそもそもアンコールもなかったので、うらやましい限りです。
    ワールドスタンダードつながりであれだけ若い方が来られたのかな?と思いました。
    どんな形にせよ、トリローミュージックが21世紀になっても広く知られたのが嬉しい限りです。

  5. nakamura8cm より:

    はじめまして。トリローファンの方が書かれたレポート、とても参考になりました。ご家族で行かれたなんて素敵ですねえ。本も凄い…そして、奈歩さんが元Petty Booka、森山姉だったとは!じゃあ、今は3代目ですか?私も細野さん見たかったです!けど、九段で見たからまあ、いいか(笑)。

  6. spiduction66 より:

    TRありがとうございました。
    年一回ぐらいは家族でコンサートへ行こうと考えておりまして、一昨年はThe Who、んでもって昨年はトリローでした。
    とにかく奈歩さんと湯川さんの「ポカンポカン」と「ポコタの歌」はよかったですね。もともとはザ・ピーナッツの曲ということもあり、同じ声質のデュエットという難しい課題を見事にこなしていました。

    皆さんのblogやコメントを拝見し、このライブへのきっかけとなったのが、鈴木→細野ラインなのかなと思いましたが、いずれにせよ生のトリロー・ミュージックに触れて新しい音楽世界への窓口になられたのではないでしょうか。

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