The Band “Christmas Must Be Tonight”に関するあれやこれや

クリスマスにちなんで、いきなり渋めの「クリスマス・ソング」を紹介してみる。
ザ・バンドの「Christmas Must Be Tonight」という曲だ。当時の邦題は「今宵はクリスマス」。

ラスト・ライブを収録した「ラスト・ワルツ」をワーナー・レコードからリリースする必要に迫られたザ・バンドは、既存のキャピトルレコードとの契約枚数を消化するためにもう1枚アルバムを制作する必要に迫られていた。そこで「やっつけ仕事」で制作したアルバムが「アイランド(Island)」だった。この曲はそのアルバムに収録されている。ボーカルは今は亡きリック・ダンコ

「やっつけ仕事」と書いたのは理由があって、このアルバムの収録曲は過去のアウトテイク、ボツになった作品、あるいはカバー曲から構成されているからだ。

ご多分に漏れず「Christmas Must Be Tonight」も、元々は1975年の「南十字星(Northern Lights ? Southern Cross)」からのアウトテイクだった。ロビー・ロバートソンが自分の息子セバスチャンの誕生を祝って書いた曲で、実際に1975年のクリスマス商戦を狙ってシングルリリースされる予定もあったようだ(結局その企画はボツになった)。
The Band Island
まあ、そんな風にして「アイランド」というアルバム自体も一般的に評価が低いようだけど、僕は決してそうは思わない。
だって天下のザ・バンドのアウトテイクだぜ。
「優しい雨のように(Right As Rain)」なんてザ・バンドらしからぬ洗練さを感じるけど、あれは名曲だと思う。
ザ・バンドらしからぬリズム・ボックスの打ち込みが印象的なインストゥルメンタル(歌詞がアルバム完成に間に合わなかった)で、アルバムタイトル曲になっている「アイランド(Island)」は、「これは歌詞はいらんでしょう」とぐらいきちっと完結している。
「伝説の女(The Saga Of Pepote Rouge)」はかつてのザ・バンドの素朴さ純朴さとはかけ離れた狡猾さを感じながらも、緻密に作られた一曲となっている、あまりにも狙いすぎた「人生は幻(Livin’ in a Dream)」は…あれれ「アイランド評」になっているな....

まあ、そんなデコボコの「アイランド」の中でも、とりわけこの曲はカチっとまとまった作品の一つだろう。
後にロビー自身が2回も再レコーディングしていることからも、彼にとっても愛着のある捨てがたい作品だったようだ。

(1988年に映画「3人のゴースト」サントラのためにレコーディングされたバージョン)

(1995年にリリースされたコンピレーション「Winter, Fire & Snow -Songs for the Holiday Season- に収録されたバージョン」 )

ふとバブル時代のことを思い出した。
クリスマス・シーズンになると街は今以上に浮ついた空気に包まれていた。ご多分に漏れず自分もその空気に乗せられていた一人だった。
貧乏学生のクセに日本橋三越のティファニーでオープンハートのネックレスを当時の彼女に買ってやったんだけど、一緒にあげたカセットテープにこの曲を入れておいた。
街の「浮ついた空気」の中で流れる「純朴な祈りの音楽」。
何かそこには対極の美学があったような気がする。