マネーゲーム

マネーゲームか人生ゲームかは知らないけど、ホリエモンのゲームがゴールを前にして頓挫している。

まだライブドアの資産にはフジテレビからの和解金1400億円もあるわけだが、ライブドア株の譲渡制限の失効を主張するフジ側が損害賠償請求をすることは必至で、その資産すら危うくなってしまうだろう。

今回の事件で皆さんも感じただろうけど、調子づいている人間には、自民党もマスコミも出資者も、さんざん持ち上げるわけだが、いざとなれば一気に尻を向けてしまうというのが世の中の怖さを改めて感じた。とりわけ「虚業はいけない」とか、「浮かれすぎ」とか、手のひらを返したようにマスコミが報道しまくっているが、まあマスコミなんてそんなものだ。ましてやホリエモンはマスコミの弱点をついた敵対的買収劇を演じた男だからね。ここぞとばかりに叩くさまは醜悪でもある。

いっぽうで、ホリエモンの最後の時期も醜悪だった。本業(いまだによくわからないのだが、ポータルサイトの運営とWEB製作会社、blogサービスということになるのだろう。)を逸脱した部分の売上が過大になりすぎて、なにで利益を稼ぐべきなのかも、自分さえも見えなくなっていたように思う。敵対的買収なんて海外では日常的だし、そうした意味では日本経済へのカンフル剤(あるいは警鐘)となった人物だけど、そういう社会を変革してやろうという正義感意識とはウラハラに組織も自分もマネーゲームの魅力にとりつかれて暴走状態になっており、全く制御ができなくなっていたのではないだろうか。

さて、僕の世代(いちこさんやマサトシさんの世代でもある)はバブル景気の全盛も、その末路も生々しく体験してきた。本業から逸脱して浮かれまくっていた人たちが、奈落の底に落ちてゆくのを見てきた。とりわけ僕の場合は、金のない学生時代がバブル期の絶頂だった。なけなしの金で贅沢な消費を繰り返し、いざサラリーマンになったら景気は下がる一方。営業売上の確保に奔走するというめぐり合わせの悪さがあった。「あんなモン、無い方がマシだった」という当時の上司のため息に深くうなづく日々を送ってきた。

かつて僕の取引先に関西でステーキ・レストラン業で全盛を誇った企業があった。堅実な出店展開で、そのままゆけば関西地区では十分なシェアが得られたはずなのに、突如としてリゾート施設やホテル業などにも投資しはじめた。しかもこの企業は、納入先であることの優位性を振るって、取引先各社にリゾート施設の会員権までをも購入させていたのである(ちなみにこれは公取法違反だ)。

しかし、バブル崩壊後にリゾート会員権も何もかもが一気に暴落し、それに引きずり込まれて本業までもが
一気に崩れ去ってしまった。その余波は取引を維持したいがために会員権を買わされた取引先にまで波及して、何社もの中小企業が共倒れになっている。中には自殺に追い込まれた社長もいた。

そうした栄枯盛衰を僕はいくらでも見てきている。だから、とてもじゃないけどホリエモンの真似はできないし、したいとも思わない(まあそんなカネもないわけだが...)。

お金の魅力って怖いよね。一生懸命WEBサイトを製作して、コツコツ蓄積したノウハウや売上よりも、ちょっとした株操作や情報操作の方が儲かるとわかったとたんに、制御がきかなくなるほど走り出してしまう。いつの間にやら本業だった筈のモノを自ら否定する結果となっている。

ホリエモンは僕より7つ年下だけど、取り巻き連中は僕とそう変わらない年齢のはずだ。だからあの浮かれた時代も体験しているはずだ。こうした連中があの時代に何を見てきたのかを、その時に感じたことをなぜ生かせなかったのかがとても不思議でならない。いっぽう、ホリエモンの社長blogには「かわいそう」「ガンバレ!」なんて激励のコメントもあるようだ。でも本当にかわいそうなのは、コツコツと本業に徹してきた一部の社員たちだと思うよ。

今回の事件に関してはホリエモンの社会的な責任も大きかったけれど、そのいっぽうで今後の彼も見て見たいという魅惑にとりつかれている。僕みたいな凡人にはありえない経験をあれだけの年齢でしたのだから、きっと居場所さえつかめれば、凄い経営者として戻ってくると思うからだ。

そういう僕って甘いんだろうな。
きっとバブル期の甘さが残っているのさ。ちゃんちゃん。