演歌学科です

「トラック野郎」シリーズのどのエピソードだったか忘れたけど、印象に残っているシーンがある。

連絡船のデッキで美しい女性が歌っている。
それを「ブラボー・ブラボー」と言いながら近づいて行く菅原文太。
「歌がお上手ですね!」と早速ヨイショすると、
「私、音楽大学に通ってますの」と答える女性。
そこで文太が早速話を合わせようとする。
「それは偶然ですね、僕も音楽大学出身なんですよ!」
「あら、そうなんですか。どちらの学科ですの?」と女性が尋ねると、

「ハイ!演歌学科です!」

もう小学生の頃にみた映画だから、記憶違いがあったら申し訳ない。
僕はこのシーンがとても印象に残っている…というか笑いこけた。

そうそう、僕の祖母は菅原文太のお母さんとは親友だった。
中等学校(仙台)だか師範学校(東京)時代だったかは忘れたけど、その位古いつきあいだったらしい。

そんな祖母から30年以上前に聞いた話をする。
この人の実家は荻窪にあって、祖母の話では「近衛(文麿)さんのお屋敷の近く」ということだから、荻窪二丁目の善福寺川に近い所にあったのだろう。
ちょうど「トラック野郎」で「菅原文太」という名前が僕ら子供でも知るようになった頃、文太のお母さんは祖母にこうこぼしたことがあるらしい。
「本当はあんな子じゃないですけどね~、あんなみっともない役をして.....お恥ずかしい」。
僕はその時に「へぇ~、菅原文太って本当はあんな人じゃないんだ」と思ってから、この人を見る目が変わった。
だから後年の落ち着いた演技を見るにつけ「本当はこういう人なんだよな」と、納得したものだ。

高倉健にロードムービーの傑作「幸福の黄色いハンカチ」があったように、菅原文太にも「トラック野郎」があった。
ここには1970年代の日本の風景がしっかりと記録されているから、道路マニアにはたまらない。
コンビニやチェーンストアや、全国展開の専門店がなかった時代の、まだまだ画一的ではなかった「日本の道」の風景がある。

こういう映画を見るにつけ、思うことがある。
映画に限らずいい芸術作品というものは、意識的にせよ無意識にせよ、その時代その時代を確実に切り取っている、ということだ。

最後に締めくくる言葉もないので、1970年代の子供らしく締めてみる。
文太さん、あの世でもデコトラで街道を爆走して下さい。できれば「こちとら17時までに荷物を届けなきゃいけないんだよ!」とか叫びながら。

コメント

  1. すみくん より:

    健さんに続き、文太さんもと悲しいですね それだけ自分も歳をとったのかと実感する日々です

  2. spiduction66 より:

    >すみくんさん
    まったくです。寂しい限りです。
    昭和がどんどん過ぎ去ってゆく。この一言に尽きますね。

  3. ケンモツ より:

    前のシーンではレバニラ炒めを食っていたり、女性の胸や尻をみては股間を大きくさせていた男が・・・好みの奇麗なお姉さんの前だと急にかしこまって、運輸省関係の仕事をしていますと自己紹介する桃さんが大好きでした。普段はトルコ風呂に通い第二の故郷と叫ぶ人が、最後は愛する人のためにトラックを走らせる姿が最高にかっこ良かった。

    桃さんの故郷がダムに沈んでしまったというエピーソードなど、当時の社会情勢をが散見されている部分も含めてトラック野郎シリーズは素晴らしい映画で、心の底から大好きです。

    健さんも文太さんも80超えて死ぬまでダンディーでカッコ良かった、あれが男の憧れで決して錆びることのない男像だと亡くなられて改めて痛感します。

    • spiduction66 より:

      >ケンモツ君
      うん、あったあった「運輸省関係」!あれも爆笑しました。
      健さんも文太もうるさいかそうでないかの違いはあるけど、不器用でお人よしな割に、自分のことはなってない。あんな人、昔は近所に沢山いたよなぁ~とそんな事を思いました。
      いい役者が二人も行ってしまって、寂しい限りですね。

  4. 文太は好きだつたのですが、愛川欽也が嫌いで、次第にこのシリーズは見なくなりました。文太一人だったら、もっと続いたかもしれませんね。

    • spiduction66 より:

      >さすらい日乗さん
      そうなんですか。キンキンはこの映画を発案したトコロがやはり大きい貢献だったんでしょうね。僕の家内などそれ以前の問題でして、70年代東映の「下品で悪ノリな」作品が大嫌いなんですよ。工事現場の開通していない陸橋をジャンプするシーンがあるのですが「これだよ、これ!70年代東映だよな!」とか一人で言っています(-_-;)

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