降りてきた「思想」

これはこのブログで書くかどうかを悩んでいたのだけど、思い切って書いてしまう。

今年の1月30日にNHK教育でETV特集選「ETV特集▽それはホロコーストのリハーサルだった~障害者虐殺70年目の真実」というのを放送していた。
ETV特集選「ETV特集▽それはホロコーストのリハーサルだった~障害者虐殺70年目の真実」
昨年の11月7日に放映したものを「選」として再放送したもの。
ナチスが行った「T4作戦」について、珍しく紹介したものだった。
ここではあまり詳しく書きたくないが「T4作戦」とは、重度の精神障がい者、知的障がい者、身体障がい者の安楽死を許容した政策。その対象となった人数は杳として判明していない。

「T4作戦」に関して書いたものとして、僕の記憶に残っているのは北杜夫の「夜と霧の隅で」。
戦後15年という時期(1960年)に芥川賞を受賞した作品だ。この本の存在を教えてくれたのも中一の時の担任の「ゲンジュウ」だった。ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」とあわせて読めと言われたものだった。「夜と霧」の方はなんだか難しくて、「隅で」の方が13歳の感受性には衝撃的で見事なインパクトを与えてくれた…てか今でもトラウマのようになっている。

やや話が脱線した。犯人の植松聖が「ヒトラーの思想が降りてきた」と発言していることをニュースで報道している。それによれば措置入院中の2月20日、病院担当者に「ヒトラーの思想が2週間前に降りてきた」と話しているとのことだ。衆院議長公邸に手紙を持参したのが2月14日だということを考えると、1月30日という番組の放映時期と妙に符合することになる。

「降りてきた」という言葉の使い方は一見「神の啓示」的なもの言いではあるが、テレビの電波というように捉えればそれはそれで筋が通るもの言いではある。
犯人の内部に蓄積していた障害者に対する葛藤や偏見が、この番組によって急激にそういう「思想」に染まった可能性は否定できないだろう(それを「思想」と言うかどうかは別問題だが)。

もしそうだとすればあまりにも安易で悲しい話だと思う。