秋の奥裾花自然園

長野市からずっとずっと西の山奥、そう戸隠山系の西側に「奥裾花」という所がある。犀川の源流、裾花川の源流にあたる場所だ。

自然保護のために「自然園」という囲い込んだような名称がついているけど、尾瀬の「国立公園」のようなもので、日本では最大の本数を誇る水芭蕉の湿原とブナの原生林からなる自然の宝庫だ。

ところがこの奥裾花という所が、なかなか行きにくい所でもある。一番近い「鬼無里(きなさ)」の集落ですら長野市内から西に県道を1時間はかかる。さらにここから北上して1時間は要する。

しかも、この道は崩落だ何だでしょっちゅう寸断される。

奥裾花への途中、鬼無里(きなさ)集落付近の土砂崩れ(2015年5月)
2019年11月3日の同地点

2015年の5月に山開きで訪れた際もそうだった。この時は道路の復旧で数年ぶりの開園だったと記憶しているし、今回も7月~9月まで道路の復旧工事で「休園」だったらしい。10月から再開園した自然園、僕が行ったのは冬季閉園の前日11月3日の事だった。

渓谷の入口にあたる奥裾花ダムあたりに来ると、晩秋の紅葉が広がっていた。
僕には至上の景色に思えた。

紅葉の奥裾花渓谷

このダムからさらに20分ほど進むと観光センターのある駐車場に到着する。
驚いた事に駐車している車はわずか10台前後。いくらなんでもこれほど人気がないとは思わなかった。

前回はGWだったのでシャトルバスがあったけど、ここから先は自然園入口まで徒歩で進むことになる。ガイドマップには徒歩30分とあったが、あまりにも景色がすばらしいので、たっぷり1時間30分をかけて歩いた。

観光センターから自然園への道。正面は戸隠連峰の乙妻山と高妻山
飛行機雲と芒野

健脚で追い抜いていった二人連れがいた以外、この道を歩く人は全くいない。これほど人がいないとは思わなかったけど、静かに自然が堪能できるのは何よりだった。

しかし、その「堪能」には危険がつきものだということは入口の看板で理解できた。

クマ出没注意

自然園は図のように「今池コース」と「こうみ平コース」「ブナ林コース」の3つからなっている。まずは前回雪道をかきわけて行った「今池コース」、そして前回は積雪が深すぎてたどり着けなかった「こうみ平」の先にある「吉池」まで行くことにした。

次の二枚はだいたい同じ付近を歩いているわけだけど、5月と11月では全く表情が違うということがわかる。

今池コース
今池コース 2015年5月

雪が積もっている時は、この道の右手へ入り込んだ所に断崖絶壁があって、そこから奥裾花渓谷が覗き込めたのだけど、今回その道は草に埋もれてしまい、どこだったのか全くわからなかった。

金色の道

その代わり、落ち葉に覆われた「金色の道」が美しかった。

今池湿原をぐるりと回って、前回水芭蕉が美しかった場所へ出る。

今池湿原と水芭蕉 2015年5月

な・る・ほ・ど・ね。
「湿」はなくて「原」ばかり。たしかにここに関しては秋は殺風景だ。これだともう一つの「こうみ平湿原」もあまり期待はできなさそう。

そこで真っすぐ「吉池」を目指すことにした。
水枯れした「こうみ平湿原」を横目に、不安を抱きつつ進んだら、その池に出た。

奥裾花自然園。秋の吉池
吉池
吉池のブナの木

何と言っていいのか....我々は観光ガイドを調べて、美しい景色を求めて旅をして、それを見て喜んだり、感動したり、ガッカリしたり....そんな風にあちこちを渡り歩いているわけだけど、この「吉池」という場所は、何かそういう日々の「旅」を超越したところにあるような気がした。

求める自然の美しさ、あるべき自然の美しさ、そういうのを超えた所で自然を見せているような気がしたのだ。

吉池の落ち葉

考えてみると今年の奥裾花自然園、中でもこの吉池を見れた人は少なかったんじゃないだろうか。5月は雪に覆われていたからここまで到達できたかどうかわからない。6月~9月は、道路工事で入園不可能だった。10月から再開されて、明日には閉園というこの日、希少な風景を垣間見れた事が、自分には何よりの体験だったのだ。

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