剱岳 点の記

カカ王さんと映画「剱岳 点の記」をみてきた。
横浜での上映は本日が最終日だったから、ギリギリでの鑑賞だった。
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2ヶ月ほど前に「こういう映画をやっていますよ、もう見られましたか?」と情報を提供して下さったのはカカ王さんだった。
カカ王さんは登山が大好きで、あっちゃこっちゃと本格的に登っている。いっぽう私は山に登らないクセに登山に関する本だけは大好きな人間だ。

「これは面白そうだ」と思い、お盆の間、京都で新田次郎の原作を読んでみた。

ストーリーはこうだ。
明治三十九年、参謀本部陸地測量部の地図測量官である柴崎芳太郎に北アルプス測量の命令が下った。その命令には今まで未踏峰とされてきた北アルプス劔岳頂上への三角点設置も含まれていた。それはまた純粋に「山登りのための山登り」をする日本山岳会との劔岳登頂争いの口火でもあったのだ。
組織の名誉を第一とするのか、職務の遂行を第一とするのか、本当の人間の誇りや名誉とは何なのか.....これは劔岳頂上への三角点設置の記録(「点の記」)である。

映画館なんてもう5年は行っていない。だけどこうした山岳映画は大スクリーンで見るに限る。劔岳登山の経験こそないが、ベースとなる室堂には3年前に行っているし、立山の雄山ならば15年前に登っている。また原作の中で廃墟マニア垂涎の「立山温泉」が重要な役割をしていたのも気になった。これがどんな風に映画では再現されるのだろう?
カカ王さんもまだ見ていないとのことだったので、それじゃあご一緒しましょうということになった。

最終日の最終時間というのは混むのかどうか見当もつかなかったけど、行ってみると映画館はガラガラだった。
200万人が観たというから、興行的には成功だったのだろうけど、今は映画のライフサイクルも短いようだ。

とにかくスクリーン一杯に広がる北アルプスの山々の荘厳で美しい風景、自然の荒々しい表情、迫力あるサウンドトラック、これだけで十分にモトがとれた。さすがは黒澤組の撮影助手だった木村大作監督だけある。その美しさにストーリーそっちのけで見入ってしまった。

カカ王さんも指摘していたけど、俳優も実際に北アルプス奥深くまで入り込んで、実際に原作に登場する要所要所で撮影していた。たとえば測量隊が辿ったルートが称名滝→八郎坂→室堂だとしたら、実際に称名滝前を横切るシーン、八郎坂を登るシーンという具合に撮影していた。立山の雄山山頂シーンなんて原作にはチョロっと登場するシーンで、映画でも数カットにもならないシーンですら、実際に浅野忠信たちに登らせて撮影していた。あそこ登るのですら15年前の僕には大変だったのに.....吹雪のシーンもそうだけど俳優たちは本当に身を張ってギリギリのところで演技をしていたと思う。険しい雪道を何時間も歩き続けてから撮影なんてことは当たり前。現地に到着しても雲が晴れるまでは撮影待機なんてことはザラだったそうだ。
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(一番中央に写っているのが劔岳じゃないかと...)
ストーリーは原作とは大きな違いがいくつかあった。
一番大きな違いについては書かないけど、細かいキャラ設定にそれが顕著だった。松田龍平演じる生田信という測量助手は最初は生意気な兄ちゃんなのだけど、大自然の驚異とそこに対峙する仲間の姿を見てゆくうちに次第に謙虚になってゆく。原作の「生田」にはここまでの個性はなかった。
また仲村トオルが演じた日本山岳会の小島烏水は、映画の最初は嫌なヤツ。柴崎の測量隊に対してライバル意識剥き出しなんだけど、それがやがて共感に変化してゆく。その過程を過剰にドラマチックに描いていた。いっぽう、原作での烏水は最初から測量部や柴崎に対して一定の理解と共感と敬意を示していた。そもそも本当の小島烏水って、あんなキザ野郎ではないはず(笑).....

原作以上に登場人物の心境の変化を大きく際立たせることは、2時間という限られた時間と映像という手段では必要なんだろう。ただし親の登頂に反対する長次郎の息子はとってつけたようで不要だと思った。

それと主人公の柴崎芳太郎を演じた浅野忠信は、ひげを剃って髪型をサラリーマン風にととのえてしまうと、とてもとてもフツーの人になってしまうことが判明した。殆ど唯一の清涼剤だった浅野の奥さん役の宮崎あおいは「篤姫」よりは似合ってきたと思うけど、まだまだ日本髪に違和感を感じてしまった。仕事とはいえ、こんな美しい奥さんを一年のうち半年も放置して北アルプスに篭っていた浅野は罪なヤツだと思った(だからといって先月のCharaとの離婚は関係ないが)。夏八木勲の行者はよかった。チョイ役だけど、井川比佐志の佐伯永丸も重みのある演技だった。
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(映画でも原作でも行者のシーンで登場した室堂の「玉殿」。3年前に撮影したもの)

映画終了後、吉村家でラーメンを食べて帰る。
実際に何度も劔岳に登られたカカ王さんの山の話は面白かった。
「劔岳、登りたくなったでしょう?」
「はい。ただ減量して体力をつけないと、多分山で死んじゃうでしょうね(笑)」。

この映画が2倍面白くなるサイト
立山博物館(芦峅寺にある)
→柴崎が劔岳山頂で発見した銅錫杖頭(重要文化財)は現在ここに。近年になって映画の主人公だった柴崎家から寄付されたとある。
WEB上ではこちらを見るべし。
立山カルデラ砂防博物館
→砂防マニアの「聖地」。いつかこの博物館企画の「立山温泉跡地見学会」に行くのが夢だ。
流離いの旅日記さん剣岳・立山登山記
→剱岳のクライマックス「カニノヨコバイ」「カニノタテバイ」について詳しい。」これは怖いけれど面白そうだなぁ~。
●登山情報「日本のアルプス
このサイトは山岳図書を読む上で大変助かっている。

コメント

  1. タケシ より:

    山の風景奇麗ですね。
    US登山隊をやる時は参加します(笑)

  2. 羊子 より:

    「立山カルデラ砂防博物館」すっごい楽しそう! 十数年前に大町~立山旅行をした時近くまで行ってるハズなのに、博物館には行ってませんでした、残念。「火山」とか「砂防」とかに心惹かれる性質なので、いつかぜひ行ってみたいものです♪ 博物館HP掲載の見学会も楽しげですねえ。

  3. spiduction66 より:

    >タケシくん
    室堂からの山の風景はそりゃあもうです。ぜひ行ってみてください。US登山隊結成した場合、一番足引っ張るのは私ではないかと(笑)

    >羊子
    おお、こんなところにも砂防マニアが!
    砂防博物館はケーブル立山駅の横にあります。そのルートだとなかなか時間に余裕ないと行けないと思いますよ。
    幸田文の「崩れ」は砂防マニア必読です。ぜひ読んでみてください。

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