この素晴らしきおっさん達の御茶ノ水ツアー

カカ王さん、キタさん、ヌッキー@リュウさん、そして僕には共通する特技がある。
それは「御茶ノ水ならば何時間でも何日でも過ごせる」ということだ。
楽器、中古CD、古書店、スポーツ品店、美味しい喫茶店、美味しいお店と何拍子も揃ったこの街には、我々を惹きつける魅力とカオスに満ち溢れている。
「いずれ御茶ノ水ツアーをやりたいね」という話をしていたところ、それが実現した。

まずは車で神田へとむかう。キタさんおすすめの神田須田町にある蕎麦屋「神田まつや」へと行く。
まつや
この江戸っぽい建築自体が文化財ものだ。店内の雰囲気も江戸前で実にいい。
キタさんおすすめの大ごまそばを注文する。
大ごまそば
手打ちにこだわった蕎麦は、コシがよくてノドにつるつるっとくる。ゴマの風味も実によかった。これで850円は安いだろう。老舗にもかかわらず気取った雰囲気はぜんぜんないし、店員は気さくな方ばかり。江戸の庶民の蕎麦屋の雰囲気が実によく残っていた。つまりおっさん4人でそばをちゅるちゅるやっても違和感のないお店だってことだ。

腹ごしらえをしたところで、水道橋にある一日最大1800円のコインパーキング(この周辺では一番安い)に駐車した後、御茶ノ水の楽器街に突入する。
まずはクロサワ楽器のDr.Soundへ。昔は地図のお店だったところだ。今はクロサワのアコースティック専門店になっていた。カカ王さんはメンテのために、MartinのD28を持参。その間に試奏会開始。

まずはリュウちゃんがGibson J-45の試奏をはじめる。1957年モノだというから、我々よりおっさんである。
値段は59万8,000円!
リュウちゃんのプレイが流れてゆく。実にきらびやかな音色。
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何でもいいけど、こういうときにカッコ良いプレイができる人はいいなぁ。僕などはグダグダだし、そもそも弾ける曲が少なすぎるわい。
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便乗して弾かせてもらった。うーん、素晴らしい音だ。
一人じゃあ59万のギターを「試奏させて下さい」と言う勇気はないから、この方々と行った効果は充分あったわけだ。
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たちまち3人が集まって色々な話をしているわけだけど、材質がどうだの、ハコの響きがどうだの、当時のネックの形状はこうだのと、とにかくこの人たち、ギターに関しての知識が凄すぎる。
一方僕はといえば無頓着すぎる。
単板と合板の違いや見方すらよく知らなかった(今回カカ王さんに教えてもらった)。
今回の御茶ノ水行きは、自分用のアコギをもう1本見立てたいというのがあったのだけど、
「ギターを買いに行くには、この人たちと行くに限る」と確信した。

カカ王さんにMartinの「D」の意味について教えてもらったのだけど、あれは「ドレッド・ノード」の略なんだそうだ。
おお「ドレッド・ノート」なら知っている。当時は画期的な大きさだったイギリスの戦艦だ。日本でも巨大戦艦のことを「弩級(どきゅう)戦艦」、やたら巨大なものに対して「超弩級」という使い方をすることがあるけど、これらは「ドレッドノート」が語源となっている。
それがギターで使われているのが意外だった。

お次は坂の上の下倉楽器。今でも職場にあるGrecoのSAを25年前に買ったお店だ。リュウちゃんとは顔なじみの神田さんという方を紹介して頂いた。リュウちゃんいわく「この人に頼めば半額にしてくれるよ」。
むろん冗談である。

ここで試奏させて頂いたのが、先ほどのJ-45の国内コピーモデルだというK.yairiのJY-45。繊細でありながら、きらびやかな響きがあって、はっきりと音が鳴る。ヘンに低音が響きすぎることもない。正直J-45とは違う感じだったが、こっちの方がむしろ好きな音だった。しかも握力がない僕でも弾きやすい。
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値段は13万8000円。お~これならば夢じゃないぞ。

他に色々なお店で弾いたものをメモとして残しておく。

●YAMAHA L-31A 1981年(220,000円)
テリー中本という有名な職人さんがプロデュースしたモデルなんだそうだ。
「ほら、当時の雑誌によく"テリー中本プロデュース"とあったでしょ?」
うーむ、ぜんぜん覚えていないなぁ。
音は力強くどーんと出てくる感じ。ストロークプレイによさそうな1台。

●Gibson J-50 Deluxe 1977年(178,000円)
今までの各機に比べたら、全体の音がつぶれていて、パッとしなかった。
「70年代にスクエアショルダーになってからは音が普通になっちゃうんですよね~」と言ったのはカカ王さんだったか。

●YAMAHA LA-18J(78,000円)
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「それじゃあこっちを試してみましょう」とキタさんが売場から持ってきたギター。
驚いたことにJ-50に比べて、こちらの方がずっとクリアな音。これには驚いた。
ブランドでも値段でもなく、自分の耳で判断することの大切さを思い知らされた瞬間だった。
いやぁ~勉強になるな。

●Gibson J-50 1965年(298,200円)
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僕と同い年のこのギターは文句なしに素晴らしかった。
同じJ-50でもぜんぜん音が違う(値段も違う)骨太さと繊細さの両方の表情が出せるギター。格弦の音がクリアで、ごちゃごちゃとしたところがなかった。リュウちゃんは相当気に入ったようで、本気で購入すべきかどうか悩んでいた。あるいは今日あたり買いに走っているかもしれないし、奥さんに怒られているかもしれない。

その後、明治大学で行われていた阿久悠展を見るわ、古本屋めぐりをするわ、神保町の「味噌や」でラーメンを食べるわ、ミロンガ・ヌオーバでコーヒーを飲むわ、Janisで中古盤あさりをするわ、タイガースファン(僕・カカ王さん)とジャイアンツファン(リュウちゃん、キタさん)という殺伐とした空気の中で日本シリーズをラジオで聞きながら帰途につくわで、実に濃くて面白い一日だった。
味噌ラーメン
また行きましょう!