第23回 伝統歌舞伎保存会 研修発表会「人情噺文七元結」

2019/1/23 水曜日

尾上音蔵君という歌舞伎役者がいます。
血の繋がりはありませんが、僕の又従兄弟になります。

もちろん梨園の出身ではありません。 大学卒業後に国立劇場の歌舞伎俳優研修生となり、2013年に尾上菊五郎一門として初舞台を踏んでいます。

歌舞伎役者としての道を歩み始めて5年になるわけですが、すでに国立劇場の特別賞も二度受賞しており、将来を嘱望されている役者さんです。

国立劇場
国立劇場。ここへ来るのは1982年以来

なーんて書きつつも、実は歌舞伎は全くの門外漢、これが人生で二度目、おそらく30年ぶりの「歌舞伎体験」でした。ちなみに30年前は大学の教授にタダを券もらって歌舞伎座へ行ったんだっけな。そして国立劇場(ただし演芸場の方)は彦六師匠の最終期の高座を見て以来だから実に37年ぶり、ということになります。

たまたま正月に叔母に誘われ、音蔵君を応援したい気持ちはもちろんあるし、観覧料がアンビリーバル(2000円!)だということもあって、家族&親戚一同でゾロゾロ行ってきたのです。あまり歌舞伎に縁のなさそうな面々ですが、思いもかけずそういうことになったため、あわてて「歌舞伎入門」とか読みだすような面々ではあると思います。

外からみた国立劇場。外部の照明を意図的に落としているため(皇居に面しているというのも理由か?)。まるで舞台をみているような感覚となります。

公演は「伝統歌舞伎保存会 研修発表会」というもの。
若手役者の発表会というわけです。ところが演目は「人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)」。おっ落語じゃんと思ったら、これは歌舞伎の演目でもあるんですね。

音蔵君の役どころは吉原の妓楼、角海老の手代藤助(とうすけ)。序幕の重要な役どころです。

国立劇場の観客席。普通の劇場と違って横幅がやたらと広いのが特徴。

古文を読み上げるように、現代語訳が必要なセリフが延々と展開されたらどうしようと思っていたのですが、なんてことはない。落語を歌舞伎っぽいセリフ廻しで喋ると表現したと思えばいい。つまり 「何言ってるかさっぱりわからん」という事態にはなりませんでした。そう、新派の演劇と古典歌舞伎の中間ぐらい。これだったら親しみやすいですね。

あたり前といえばあたり前なんですが、役者さんすべてマイクなしでセリフを喋る。何しろ1500席の大劇場ですよ。全体に行き渡るように声を出すのです。並大抵の発声じゃありません。

どんな舞台でもそうだけど、役者さんによって聞きやすい声の持ち主もあれば、そうでない方もいる。特に背中をこちら(観客)に向けている場合は、その差が出る。歌舞伎などでは女形の場合など無条件に大変だなぁと思いました。声色を高くして劇場全体に響き渡らせるわけですから。

音蔵君はとても聞きやすかった!演技も歯切れがあって心地よかったです。彼は大学では演劇サークルにいたそうで、天性のものもあるのでしょうけど、そういう経験がとても活きているのでしょう。何にしても発声練習は大切ですね(笑)。

僕がとても印象に残ったのは二幕目から主人公の長兵衛を演じた尾上音之助さん、セリフが最も聞きやすく、テンポのよい演技、そしてムードメーカー的な雰囲気のある方でした。

年季の入った舞台。ここに様々な名優が立ったのでしょう。

ところで、さっきから観客席から「おたぁや!」という掛け声が入る。「音羽屋」っていう掛け声ですね。これを聞くと「ああ歌舞伎を見にきたんだなぁ」という気分が倍増します。

建物の外観がおとなしい分、ロビーは華やか。

それと、演目が終わった後の大喜利が凄かった。
今回の演目を監修した尾上菊五郎、指導をした中村時蔵、市川團蔵、尾上松緑、尾上菊之助なんていうメンバー(敬称略)がずらりと揃って、観客にクイズを出してプレゼントをくれるわけですよ。何だか途轍もない贅沢感がありました。

1966年竣工。

そう「贅沢」という事で申せば、フツーに客席に藤純子さんと寺島しのぶさんがいるというのが最高に贅沢だったかもしれません。