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素晴らしき日曜日

という昭和22年の映画がある。

素晴らしき日曜日
二人の所持金がわずか35円(現代に換算して2500円ぐらい)のカップルが、日曜日のデートをどうやって過ごしたかという映画だ。

雄造は敗戦で傷つき、恋人だけが心の支えだ。
昌子は何かとふさぎ込み勝ちな雄造のことを、陽気に励ましている。

二人の収入を合わせても、とても世帯を持って暮らせる状態ではないけど、二人にはいつか喫茶店を経営したいという夢がある。

その日のデートはさんざんなものだった。
二人で住めそうな貸家を見にゆけば、環境の悪さと家賃の高さに落ち込むばかり。
子供に混ざって草野球をやれば、マンジュウ屋にボールを打ち込んでしまい、弁償する羽目に。
成功した昔の友人の所へ会いにゆけば、門前払いを食らわされる。
戦災浮浪孤児に同情したのに、「あんたたちもオイラと似たようなもんだ」と逆に同情されてしまう。
動物園にゆけば、自分たちより立派な家に住んでいる動物たちがうらやましい。
シューベルトの「未完成交響曲」の音楽会にゆけばダフ屋にチケットは買い占められて入場できない。
喫茶店にゆけばボッタクられてしまう。

散々な目に会う二人だが、空襲の焼け跡で、自分たちが開くであろう喫茶店の夢を熱く語り合うのだった(画像参照)。

ラストシーンは誰もいない夜の野外音楽堂だ。
二人だけのための想像の「未完成交響曲」を演奏しようと、ステージでひとりタクトを振る雄造。でも音楽は流れてこない。

それを励ますために昌子は直接映画の観客へ向かって呼びかける
「世の中には私たちのようなかわいそうな恋人たちが沢山います。私たちが夢を描くことのできるように、どうか温かい拍手をお願いします。」

すると音楽が流れ出す...

敗戦直後の日本で、こんな洒落た映画を作ったのは、若い頃の黒澤明だった。

フランスでこの映画を上映した時、ラストーシーンで観客から拍手がわき起こったというエピソードもある。

その昌子役を演じた女優の中北千枝子が9月13日、急性心筋梗塞で亡くなった。享年79歳...

けっして美人女優だったというわけではないが、その素朴な雰囲気と健気な陽気さが映画では輝いていた。後年は成瀬巳喜男監督の映画や「日生のおばちゃんCM」の演技が印象に残る。

聞けば本日、五反田でお葬式が行われるということだ。
日曜日に出会った女優と、日曜日にお別れするというのも、
何か意味があるのかもしれない。

謹んでご冥福をお祈り致します。

P.S.「素晴らしき日曜日」はレンタル可能。

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