7/11 サイモン&ガーファンクル at 東京ドーム

「僕たち恋人になろうよ
いつか結婚して二人の財産を一つにするのさ。
僕の旅行鞄の中には、不動産も入っているしね」
そう言うと僕らは一箱の煙草と、
ミセス・ワグナーのお店のパイを買って、旅立ったのさ。
僕らのアメリカを探すために。
(サイモン&ガーファンクル “アメリカ”)

ポール・サイモンによるこの詩がとても好きだ。
恋人たちは旅の中で時にははしゃぎ、時には我にかえってふさぎこんでしまう。夢と理想を持ちながら、どこか自信なさげに旅を続けてゆく。夢の持つ儚さみたいなものを一編の寓話の中に織り込んでいる。

サイモン&ガーファンクルの音楽が美しいとすれば、まさにこの「自身のなさ」や「儚さ」があるからだろう。1960年代、大勢の同時代のアーチストが能天気さ、若いことのみずみずしさ、力強い決意、力強い弾劾、無鉄砲さ、そんな言葉を音楽に乗せて送り出していた時代に、ポール・サイモンの言葉は、暗闇と対話し(「Sound of Silence」)、自分の殻に閉じこもるのが安全だと説き(「I’am Rock」)、自分の若さなんて永遠じゃないとあっさり認め(「Leaves That Are Green」)、人前でやっている自分の音楽なんて詐欺に等しいと告白(「Homeward Bound」)していた。

まあポール自身のキャラにも青白い文学青年っぽいところがあって、この人は昔からずっと何だか自身なさげな雰囲気がある。昔、アメリカのコメディ番組「Saturday Night Live」でホステス役の女性がポールに対して熱情的な「明日に架ける橋」を歌いながら迫るというコントがあったんだけど、この時のポールのとまどいぶり、照れ具合は、プロ活動15年のミュージシャンじゃなかったよな。
そんなポール・サイモンを、僕は20世紀最高の詩人のひとりだと思っている。

(セサミ・ストリート出演時のポール。楽しそう)

そのサイモン&ガーファンクルの16年ぶりの来日コンサートへ行って来た。二人ともすでに68歳、二人一緒のステージを見れるのはこれが最後だろうと思った。

僕はキタさんと行ったのだけど、前日にはKさんが、同じ日にニャンコ先生とヒロさんがこのライブに行っている。会場は東京ドーム。
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考えてみれば、これだけの大きな会場でライブを見るのは、プリンスの横浜スタジアム以来。
「昔よりはマシになりましたけど、音響は悪いですよ」とキタさん。
以外だったのはお客さんの層が、僕より上だということ。もう少し同世代あたりがいるとは思っていたけど、43歳は若いほうだった。
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(最近のツアー画像、7月11日のステージではポールは帽子を被っていた)
やがて御大が登場する。

2004年のライブDVD「Old Friends」とは曲構成や進行がかなり似ていた。
同DVDのオープンニングで流された彼らの印象的なモンタージュ映像のあと、
Old Friends/Bookends
Hazy Shade of Winter
I Am a Rock
America
という曲順で進んでゆくのも一緒だった。
途中で最初のデビューである「Tom&Jerry」時代の思い出話になる。
「僕たちは11歳で出会って、15歳でデビューしたのです」とアート・ガーファンクルが語るのだけど、その際にカタコトの日本語で「ジュウイッサーイ」「ジュウゴサーイ」というのには笑った。
Tom & Jerry
(1957年にTom& Jerry名義で「Hey Schoolgirl」でデビューした当時の写真)
Keyを下げている曲も多かったけど、予想していたよりははるかに美しい声が出ていて、ホッとしながら聞いていた。

それとサポートのミュージシャンが素晴らしかった。1981年のセントラル・パーク・コンサートでは、スティーヴ・ガッド(ds)、リチャード・ティー(key)なんていう凄腕のミュージシャンを起用していた。
今回、知らない方ばかりでしたが、後でキャリアを調べて驚いた次第
Warren Bernhardt (piano=ドナルド・フェイゲンや渡辺香津美とも競演、スティーリー・ダンに在籍していたこともあるらしい)
Charley Drayton (drums=ドラムうめーなーとは思いましたが、ストーンズ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコック、奥田民生のサポートをしていたとは.....)
Jamey Haddad (percussion)
Bakithi Kumalo (bass)
Larry Saltzman (guitar)
Rob Schwimmer (keyboard)
Mark Stewart (guitar)
Tony Cedras (accordion,Keyboard)
Vincent Nguini (guitar)
Andy Sniytzer (sax)
という感じ。
いやはや参りました。
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(こういう髪の毛の場合、将来薄くなるのは右のアート・ガーファンクルだと思っていたのだが.....)

やはり有名な「明日に架ける橋」「サウンド・オブ・サイレンス」「コンドル」あたりの盛り上がりは尋常でなかったけど、お客さんが叩く手拍子が、ドームの反響でグダグダになってしまい、ミュージシャン的にはやりにくかったんじゃないだろうか。
それに対してソロ曲とかは盛り上がらなかったのだけど、ポールのソロ「Slip Slidin’ Away」もアートのソロ「Heart in New York」も生で見れて嬉しかった。

最後は「セシリア」で盛り上がってエンド。
開演が17時で終演が19時30分ぐらいという、かなり健全なタイムスケジュールのライブだった。だから会場の外でニャンコ先生とヒロさんと合流し、御茶ノ水のキッチン・カロリーで学生時代から大好物のカロリー焼きを食べてから帰ることができた。

あれから2日がたったのだけど、相変わらず自分に言い聞かせている。
「いいかい、お前は60年代の洋楽の歴史では絶対に外すことのできないS&Gを見たんだぜ。無名時代のキャロル・キングにデモ・テープの作り方を手ほどきし、ジョージ・ハリスンやジョン・レノンとも競演したポール・サイモンを生で見たんだぜ」
それでもいまだに実感がわかないのは、東京ドームがあまりにも大きくて、ミュージシャンとの距離が遠すぎたからかもしれない。