Theatre Brook Live

2007/10/7 日曜日

以前からマサトシさんには「シアターブルックのライブに連れていって下さい」とお願いしていたのだが、ひと月前「ファンクラブイベントのライブがあるのですが、いかがですか」とお誘いがあった。
「お願いします」と即答した。

そんなわけで「BrookersNight」へ行ってきた。いきなりファンクラブのイベントに参加するという、ディープな(濃い)体験。場所は代官山に新しくできたライブハウス「晴れたら空に豆まいて」だ。

さて、シアター・ブルック
10年ほど前のことだと思うけれど...あっこれ、僕がCDショップに勤めていた時の話ね...音楽ソフトの商社からの企画でブレイクが予想されるアーチストを5~6組紹介するというのがあった。

その中のひとつに選ばれていたのが彼らだった。さっそく「ありったけの愛」の収録されたサンプル盤とPVを収録したビデオテープが届いた。そこで歌うリーダーの佐藤タイジさんを見た瞬間、純粋に「うぉっ、濃い顔」と思ったのを記憶している。何しろ最初にリリースされたミニアルバムのジャケットは、こんなだ。
佐藤タイジ
当時はこのジャケットのインパクトが凄すぎて全然気づかなかったけど、このジャケットは彼らの音楽性や方向性を言い当てていた。この超ド級の濃さ(こゆさ)を持った佐藤タイジさんの陶酔した顔の向こうには、当時日本のロックバンドがやりたくても手を出せなかったファンクモード全開のソウル節がギラギラ光っていたと思う。

あれから10年が経過して、メンバーも変化し、音楽の幅も広がった。

これはマサトシさんの受け売りだけど、現在のメンバーは最強のラインナップだ。その演奏能力の高さゆえ、それぞれのメンバーがバンド活動以外にもセッション・ミュージシャンとしても活躍し、あるいはプロデューサーとしても活躍している。その結果、最強のライブバンドとなっている。逆に言えばアルバムなどのスタジオ録音の楽曲だけでは彼らの良さは伝わりにくいということだ。そういう点ではThe Whoに似ているかもしれない。だからこそこういうバンドの生のステージは見ておく価値があるだろうと、そんなことを思っていた。

この日はファンクラブのイベントということもあり、彼らにとっては久しぶりの単独ライブだったらしい。イベントの内容が内容だけに、リラックスした演奏を聞かせてくれるだろうと期待して行った。

実際に見る佐藤タイジさんは、上のジャケットそのものだった。この「濃さ」で大半のソングライティングとボーカル&ギターを担当している。ロック系のギタリストにしては珍しく「シャカシャカシャン」というめまぐるしいギターカッティングによるリフをサウンドの中に生かすことのできるギタリストだ。
凄いと思ったのは、この人のギターのいたぶり方。なんとナイロン弦のクラシックギターをアンプにつないでいる。しかもエフェクターのワウを通して弾く。そのうえ、そのギターでエレキギターのようにギターソロまでしてしまう。こんなプレイをする人を、僕は見たコトがない。
それともうひとつはエフェクターのディレイの使い方、ディレィというのは、音の発音を二重三重に遅延させる装置なのだけど、それを駆使して実にセクシーなギターソロを聞かせてくれる。「グルーヴしているギター」ってこういうギターだろうな。空中を浮揚するようなギターってこういうのだろうな。
昔、ピンク・フロイドのデイブ・ギルモアが「The Wall」でこんなプレイをしていたことを思い出した。

ベース担当の中條卓さんは。長いヒゲの哲学者みたいな風貌で、静かに静かに哲学者のようにステージに立っていた(個人的にはその風貌が伝説のベーシストルイズ・ルイス加部に似ているなと思った)。彼はフレットレスベースを駆使しながらとても手堅いプレイを見せてくれた。ドラムスの沼澤さんとのコンビレーションもよく、ドラムスを引き立てたプレイだという印象を受けた。でもマサトシさんに言わせると、時にはもっと大胆になることもあるらしい。

キーボードのエマーソン北村さんはJAGATARAやMUTE BEATといった伝説的なグループに在籍したこともあるキーボード・プレイヤーだ。名前からキーボードプレイヤーのキース・エマーソンを想像してしまうが、ライブのソロ・パートでは、本当にそんなクラシック風の演奏を見せてくれた。タイジさんのギターと絡む絡む....
これは余談だが北村さんのMUTE BEAT時代の同じメンバーにトロンボーン担当の増井朗人さんというのがいる。僕は高校時代にロック同好会にいたことがあったが、増井さんは先輩だった。彼は後にKEMURIというバンドにもいたが、こちらにはhorii君の先輩の故森村亮介氏がいた。人と人とはどこかで繋がっているようだ。

さて、最後はドラムス。
沼澤尚さんは日本を代表するカリスマ・ドラマーだ。プレイヤー系の雑誌のドラマーの人気投票では、毎年のように1位を獲得している。セッション・ミュージシャンとしても大忙しの人で、昨年は"くるり"のサポートもしていた。
とにかく凄かったのは、彼のドラムのひとつひとつの音が日本人離れしているということだった。フツーの日本人のドラムの音を「ドン」とすれば、彼のドラムは「ズドン」だ。厚みと迫力が全然違っていた。どういうわけでああいう音が出るのかなと思い、彼の腕を見てびっくりした。まるでポパイみたいな太さで、これまた日本人離れしていた。しかも長丁場のライブを本当に楽しそうにニコニコしながら叩いていた。
最近では別の話題でも有名になってしまった沼澤さんだが、これまた別の話。

僕の見ていた場所のまん前に、沼澤さんのバスドラのケースが置いてあったので、貼ってあるステッカーを撮影した。
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「シアターブルック」と書いてあるということは、他にも「くるり用」とか「スガシカオ用」「奥田民生用」「清春用」とかあったりして....(セッション・ミュージシャンとしての仕事も多忙だ)。

彼らは本当にライブバンドだった。しかも演奏力で魅せてくれるライブバンドだ。
CDでは5分前後の楽曲は10分にも20分にも広げられ、そこで縦横無尽にプレイされていた。それに驚いたのはタテノリだけではなくヨコノリでグルーブ感溢れる演奏をキチンとこなせる点で、これは日本のロックバンドとしては珍しいんじゃないかと思った。
それとこの一体感....ファンクラブのイベントというのもあり、久しぶりの単独ライブというのもあり、思う存分プレイを楽しんでいるというのが、初見の僕にもヒシヒシと伝わってきた。
なぜかそこには拳を振り上げて「ありったけ~の~」とやっている僕がいたのである。

最後に....
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ライブハウス入り口の階段で談笑する佐藤タイジさん(左)。入場前に撮影。

お誘いくださったマサトシさん、ありがとうございました。